介護記録の保存期間|国の基準は2年・条例で5年の自治体も。起算点と電子保存【2026年】

要点
介護記録の保存期間は、国の運営基準(厚生労働省令)では「その完結の日から2年間」です。「完結の日」は、契約の解約・解除、他の施設への入所、利用者の死亡、利用者の自立などで、その利用者への一連のサービス提供が終わった日を指します。ただし運営基準は都道府県・市町村が条例で定めるもので、2026年10月1日時点で確認できた条例では、大阪府・栃木県・川崎市が5年としています。保存期間も起算点も事業所を指定した自治体の条例で決まるため、まず自分の指定権者の条例を確かめてください。記録は紙でなく電磁的記録で保存できます。
- 2年間国の運営基準その完結の日から
- 5年間大阪府・栃木県・川崎市条例で延ばしている例。起算点は自治体で違う
国の基準:「その完結の日から2年間」
国の運営基準は、サービスの種類ごとに「記録の整備」の条文を置き、利用者へのサービス提供に関する記録を「整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない」と定めています。あわせて、従業者・設備・会計などに関する諸記録も整備するよう定めています(こちらには運営基準の中で保存の年数が書かれていません)。
保存が求められる記録はサービスごとに条文で列挙されています。主なサービスは次のとおりです。
| サービス | 条文 | 保存する記録 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 居宅基準 第39条第2項 | 訪問介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録 |
| 通所介護 | 居宅基準 第104条の4第2項 | 通所介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等・市町村への通知・苦情・事故の記録 |
| 短期入所生活介護 | 居宅基準 第139条の3第2項 | 短期入所生活介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等・市町村への通知・苦情・事故の記録 |
| 福祉用具貸与 | 居宅基準 第204条の2第2項 | 福祉用具貸与計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、福祉用具の保管・消毒を委託した場合の結果等の記録、市町村への通知・苦情・事故の記録 |
| 居宅介護支援 | 居宅介護支援基準 第29条第2項 | サービス事業者等との連絡調整の記録、居宅介護支援台帳(居宅サービス計画、アセスメントの結果、サービス担当者会議等、モニタリングの結果の記録)、身体的拘束等・市町村への通知・苦情・事故の記録 |
| 介護老人福祉施設(特養) | 特養基準 第37条第2項 | 施設サービス計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等・市町村への通知・苦情・事故の記録 |
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 地域密着型基準 第107条第2項 | 認知症対応型共同生活介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等・市町村への通知・苦情・事故の記録、運営推進会議の報告・評価・要望・助言等の記録 |
居宅基準=指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)、居宅介護支援基準=指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(同第38号)、特養基準=指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(同第39号)、地域密着型基準=指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)。条文は厚生労働省の法令等データベースで2026年10月1日に確認したものです。事故の記録とあわせて市町村に出す報告の様式は介護の事故報告書の記事で説明しています。
記録の中身をソフトでどう扱うかは、サービス別の記事にまとめています。訪問介護は訪問介護の介護ソフト、通所介護は通所介護の介護ソフト、居宅介護支援はケアプラン作成ソフトの選び方、訪問看護は訪問看護計画書・報告書の記事を見てください。
障害福祉の計画相談支援は、国の基準そのものが「当該指定計画相談支援を提供した日から五年間」です(指定計画相談支援の基準 第30条第2項)。詳しくは計画相談支援のモニタリングの記事で扱っています。
「その完結の日」はいつか:起算点
国の基準の2年間は、記録を書いた日からではなく「その完結の日」から数えます。解釈通知(老企第25号など)は令和3年度の改定で、この意味を次のように示しました。
- 「その完結の日」とは、個々の利用者につき、契約終了(契約の解約・解除、他の施設への入所、利用者の死亡、利用者の自立等)により一連のサービス提供が終了した日を指す(訪問介護・居宅介護支援などの解釈通知。令和3年3月16日の介護保険最新情報Vol.934)
- 令和6年度改定の老企第25号の新旧対照表でも、同じ文言が残っています
つまり国の基準では、同じ利用者に何年もサービスを続けている間は、数年前の記録も保存期間に入ったままです。契約が終わった日から2年が経つまで残します。
一部の記録は、完結の日の考え方が違います。特定施設入居者生活介護や福祉用具貸与で業務を他の事業者に委託している場合の記録は、利用者との契約の終了ではなく、委託先の業務の実施状況を確認した日を「完結の日」とすると解釈通知に書かれています。
自治体によって違う理由と例
運営基準の多くは、国の省令が直接事業所を縛るのではなく、指定を行う自治体が条例で定める仕組みです。居宅基準の第1条は、条例を定める主体を都道府県(指定都市・中核市はその市)とし、記録の整備のように「従うべき基準」「標準とすべき基準」に挙げられていない事項は「参酌すべき基準」としています。居宅介護支援の基準を条例で定めるのは市町村です。参酌すべき基準は、自治体が地域の事情に応じて変えられるため、記録の保存期間を5年に延ばしている自治体があります。
2026年10月1日時点で、条例や自治体の資料の原文で確かめた例は次のとおりです。
| 自治体 | 保存期間と起算点 | 根拠 |
|---|---|---|
| 大阪府 | 訪問介護の記録は、サービスを提供した日から5年間(計画は計画の完了の日から、市町村への通知の記録は通知の日から) | 大阪府の居宅サービスの基準条例(平成24年大阪府条例第115号)第43条第2項。府の条例は府が指定する事業所に適用され、大阪市などは市の条例で定めている |
| 栃木県 | 省令の「2年間」を「5年間」と読み替え、起算点は完結の日のまま。訪問介護では身体的拘束等・苦情・事故の記録は2年間のまま。居宅介護サービス費などの算定に関する記録は完結の日から5年間 | 栃木県の居宅サービスの基準条例(令和3年栃木県条例第23号)第4条・第6条 |
| 川崎市 | サービス提供に関する記録は5年間。市の資料は、起算日を計画は目標期間の最終月の翌々々月の1日、サービスの内容等の記録はサービス提供月の翌々々月の1日、それ以外は記録作成日の属する月の翌月1日と説明 | 川崎市「記録の整備・保存」 |
| 沖縄県 | 県の基準条例・規則では完結の日から2年間。ただし、サービス提供に関する記録はサービス提供から5年間の保存を推奨 | 沖縄県「介護サービス事業者における記録の整備について」 |
国の基準
完結の日から2年
- 契約終了などでサービス提供が終わった日から
- 利用が続く間は古い記録も残す
大阪府の条例
提供した日から5年
- 計画は計画の完了の日から
- 市町村への通知の記録は通知の日から
川崎市の資料
5年
- サービスの内容等の記録は提供月の翌々々月の1日から
- 事故などの記録は作成月の翌月1日から
同じ「5年」でも、栃木県は起算点を完結の日のまま、大阪府は提供した日からとしているように、数え方は自治体で違います。川崎市は、運営規程や契約書・重要事項説明書で保存期間を5年未満にしている場合は5年以上に改めるよう求めています。事業所の運営規程と重要事項説明書の記載も、指定権者の条例とそろっているか確かめてください。
保存期間が5年とされる背景:報酬の返還
記録は介護報酬の請求の根拠です。川崎市の資料は、保存が義務付けられた記録が残っていないと、サービスを提供した事実が確認できないものとして、すでに受け取った介護報酬の返還を求められる可能性があるとしています。
厚生労働省の「介護保険施設等に対する監査マニュアル」(令和6年4月)は、返還を求める債権の時効を次のように説明しています。
| 返還の種類 | 時効 | 根拠(マニュアルの記載) |
|---|---|---|
| 不正請求として、介護保険法第22条第3項に基づき徴収する徴収金 | 2年 | 介護保険法第200条。督促で時効が更新される |
| 不正請求と認定せず、過誤調整で差額の返還を求める場合 | 5年 | 民法第703条の返還請求権。地方自治法第236条第1項。納入の通知と督促で更新できる(同条第4項) |
沖縄県の資料も、過誤調整が5年さかのぼることもあるため、記録がないと報酬返還の可能性があるとして、サービス提供から5年間の保存を勧めています。条例が2年の自治体でも、請求の根拠になる記録は長めに残しておくと、後からの確認に答えやすくなります。
電子で保存してよいか:電磁的記録
記録は紙でなく電子データ(電磁的記録)で作成・保存できます。居宅基準第217条第1項、居宅介護支援基準第31条第1項、特養基準第50条、地域密着型基準第183条が、書面で行うとされている作成・保存などを、書面に代えて電磁的記録で行えると定めています。川崎市の資料も、記録は電子文書で保存できると案内しています。
令和3年度改定の解釈通知(Vol.934)は、保存の方法を次の2つとしています(被保険者証に関するものを除く)。
- 作成した電磁的記録を、事業者のパソコンのファイルや磁気ディスク等で保存する
- 紙に書かれた内容をスキャナ等で読み取ってできた電磁的記録を、同じように保存する
あわせて、電磁的記録で行う場合は、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」と、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」などを守るよう求めています。介護ソフトやクラウドで記録を保存するなら、保存期間のあいだデータを消さずに残せるか、必要なときに画面や紙に出せるかを確かめておきます。記録の入力を楽にする音声入力などのツールは記録・音声入力にまとめています。紙の記録を電子に切り替える手順と根拠は介護記録の電子化で整理しています。
ソフトを乗り換えるとき・解約するときの注意
ソフトを解約すると、過去の記録を画面で見られなくなることがあります。保存期間は国の基準でも「完結の日」から数えるため、利用が続いている利用者の記録は、何年前のものでも保存の対象です。条例が5年の自治体では、さらに長く残す必要があります。
- 指定権者の条例を確かめる保存期間と起算点を確認する
- 残す記録を決める計画・提供記録・苦情・事故などの記録
- 書き出す形式を決める新しいソフトに移すか、PDFなどで残すか
- 書き出しを確かめてから解約する読める状態で保存できたかを確認する
- 新しいソフトに移せるデータと、移せないデータを、旧・新両方の提供元に確かめる
- 移せない記録は、旧ソフトからPDFなど後から読める形で書き出しておく
- 書き出したファイルの保管場所と、誰が見られるかを決めておく
切り替える月の決め方や契約の確認は介護ソフトの乗り換えの記事、新しいソフトの比べ方は介護ソフトの選び方にまとめています。事務・請求の担当者向けのツールは事務・請求担当の方向け、管理者向けは管理者・施設長の方向けでも探せます。
すべての介護ソフトは介護ソフトのカテゴリで比べられます。
よくある質問
介護記録は書いた日から2年たてば捨ててよいですか?
国の基準では、2年は記録を書いた日からではなく「その完結の日」から数えます。完結の日は、契約の解約・解除、入所、死亡、自立などで、その利用者への一連のサービス提供が終わった日です。さらに、条例で5年としている自治体や、起算点を「提供した日」としている自治体もあるため、指定を受けた自治体の条例で確かめてから廃棄してください。
自分の事業所の保存期間はどこで確かめればよいですか?
事業所の指定を行った自治体の基準条例です。居宅サービスは都道府県(指定都市・中核市はその市)、居宅介護支援は市町村が条例を定めます。自治体の介護保険の担当課のページに、国の基準と違う「独自基準」としてまとめられていることがあります。
紙の記録をスキャンしてPDFで保存してもよいですか?
はい。令和3年度改定の解釈通知は、書面の内容をスキャナ等で読み取ってできた電磁的記録をファイルで保存する方法を認めています。保存する場合は、個人情報の取扱いのガイダンスや医療情報システムの安全管理のガイドラインに沿って管理します。
従業者の勤務記録や会計の記録も2年ですか?
国の運営基準は、従業者・設備・会計などに関する諸記録を「整備しておかなければならない」と定めていますが、この条文には保存の年数が書かれていません。栃木県のように、居宅介護サービス費などの算定に関する記録を5年間保存するよう条例で定める自治体もあります。税や労務の書類はそれぞれの法律の保存期間もかかるため、あわせて確認してください。
出典
- 厚生労働省 法令等データベース「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999404&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省 法令等データベース「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省 法令等データベース「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999406&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省 法令等データベース「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa7858&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省 法令等データベース「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第28号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83ab2665&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.934 「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準…の制定に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について」(令和3年3月16日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000763179.pdf - 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号)(抄)」新旧対照表(令和6年度介護報酬改定)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221584.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1249 「介護保険施設等に対する監査マニュアル」について(通知)」(令和6年4月5日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001241594.pdf - 大阪府「大阪府指定居宅サービス事業者の指定並びに指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準を定める条例」(平成24年大阪府条例第115号)
https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001727.html - 栃木県「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例」(令和3年栃木県条例第23号)
https://www.pref.tochigi.lg.jp/reiki/reiki_honbun/e101RG00001931.html - 川崎市「記録の整備・保存」
https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000105/105693/kirokunoseibi_hozon.pdf - 沖縄県「介護サービス事業者における記録の整備について」
https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/321/kirokuhozon.pdf
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