事故報告書(介護)の書き方|報告する事故の範囲・5日以内の期限・標準様式の項目【2026年】

要点
介護の事故報告書とは、介護サービスの提供中に事故が起きたとき、事業所が市町村に出す報告書です。国の標準様式は、令和6年11月29日の厚生労働省の通知(介護保険最新情報Vol.1332)で改訂され、令和3年3月19日の旧通知はこの日に廃止されました。報告するのは、死亡に至った事故と、医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受けて投薬・処置など何らかの治療が必要になった事故で、原則すべてです。第1報は様式の1〜6の項目を可能な限り書き、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に、原則として電子メール等の電磁的方法で出します(2026年10月10日時点で確認できた最新の通知による)。
- 2種類原則すべて報告する事故死亡と、治療が必要になった事故
- 5日以内第1報の目安様式の1〜6を可能な限り記載
- 9項目標準様式の項目
- 2年事故の記録の保存完結の日から(運営基準)
事故報告書とは:運営基準の義務と国の標準様式
事故報告書は、運営基準の「事故発生時の対応」で事業所に課された、市町村への連絡の義務を果たすための書類です。たとえば訪問介護では、指定居宅サービス等の運営基準第37条が、事故が起きたら市町村、利用者の家族、居宅介護支援事業者などに連絡し、必要な措置を講じること、事故の状況と処置を記録すること、賠償すべき事故は損害賠償を速やかに行うことを定めています(多くの居宅サービスで準用、または同じ趣旨の規定があります)。特別養護老人ホームでは、基準第35条第2項が、市町村・入所者の家族等への連絡の義務を定めています。
市町村への報告の様式と範囲は、法令ではなく厚生労働省の通知が標準を示しています。令和6年11月29日の通知は、令和6年度介護報酬改定の審議報告が「様式の統一化や電子的な報告」に向けて市町村に電子的な受付を求めたことを受けて、様式を電子的な報告と受付を想定した形に改めました。選択式の項目はチェックボックス形式になり、市町村が独自に集めたい情報を足せる「独自項目追加欄」「独自選択肢欄」ができています。
報告する事故の範囲
国の通知は、次の2つを原則としてすべて報告するよう求め、それ以外の事故は各自治体の取扱いによるとしています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 原則すべて報告する | ①死亡に至った事故 ②医師(施設の勤務医、配置医を含む)の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故 |
| 自治体の取扱いによる | その他の事故(誤薬、行方不明、感染症、職員の不祥事など、どこまで報告するかは市町村が決める) |
市町村が定める範囲は、国の2つより広いことがあります。たとえば横浜市は、ケガや死亡のほかに、誤薬(与薬漏れ・落薬を含む)、離設・行方不明、食中毒・感染症、職員の不祥事、火災なども報告の対象にしています。船橋市は、令和7年3月から国の標準報告様式とオンライン申請を必須にし、報告するケガの程度を国の通知と同じ基準に改め、事業者側の過失の有無は問わないとしています。自分の事業所がある市町村の取扱要領で確かめてください。利用者の個人情報の漏えいや紛失は、市町村への事故報告とは別に個人情報保護委員会への報告が要るので、個人情報漏えいの報告手順の記事もあわせて見てください。
国の様式は、介護保険施設、認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム、軽費老人ホームの事故を対象に作られていますが、通知はその他の居宅などの介護サービスでも可能な限り使うよう求めています。
期限と出し方:第1報は5日以内が目安
第1報は、様式の1〜6の項目を可能な限り書いて、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に出します。その後は状況の変化などに応じて追加の報告をし、事故の原因分析と再発防止策は作成次第報告します。
- 市町村・家族などに連絡運営基準の事故発生時の対応
- 第1報を出す様式の1〜6。遅くとも5日以内が目安
- 追加の報告状況の変化に応じて
- 最終報告原因分析と再発防止策を作成次第
- 出し方: 原則として電子メール等の電磁的方法で出します(令和3年の旧通知は「電子メールによる提出が望ましい」でした)。市町村の電子申請で受け付けている例が増えています。横浜市は「横浜市電子申請・届出サービス」で受け付け、事前の事業者登録が必須です。仙台市は「せんだいオンライン申請サービス」で第一報を受け、第一報から10日以内に事故報告書を出すよう求めており、ファクスでの提出は受け付けていません
- 様式: 市町村への報告は、可能な限り国の様式を使います。市町村がこれまでの独自の様式を使うことは妨げられていませんが、その場合も国の様式の項目を含めるよう通知は求めています
- 報告の回: 様式の上に「第1報」「第○報」「最終報告」の区分があり、同じ事故について回を分けて出します
標準様式の9項目と書き方
国の標準様式(別紙)は次の9項目で、第1報では少なくとも1〜6を書きます。複数当てはまる選択肢はすべて選びます。
| 項目 | 主な記入欄 |
|---|---|
| 1 事故状況 | 事故状況の程度(受診(外来・往診)、自施設で応急処置/入院/死亡/その他)、死亡に至った場合の死亡年月日 |
| 2 事業所の概要 | 法人名、事業所(施設)名、事業所番号、サービス種別、所在地 |
| 3 対象者 | 氏名・年齢・性別、サービス提供開始日、保険者、住所、要介護度、認知症高齢者日常生活自立度 |
| 4 事故の概要 | 発生日時、発生場所(居室・トイレ・廊下・食堂等共用部・浴室・脱衣室など)、事故の種別(転倒・転落・誤嚥・窒息・異食・誤薬、与薬もれ等・医療処置関連(チューブ抜去等)など)、発生時の状況と事故の内容の詳細 |
| 5 事故発生時の対応 | 発生時の対応、受診方法(施設内の医師(配置医含む)が対応/受診(外来・往診)/救急搬送)、受診先、診断名、診断内容(切傷・擦過傷、打撲・捻挫・脱臼、骨折など)、検査・処置等の概要 |
| 6 事故発生後の状況 | 利用者の状況、家族等への報告(続柄・報告年月日)、連絡した関係機関(他の自治体・警察など) |
| 7 事故の原因分析 | 本人要因、職員要因、環境要因の分析(できるだけ具体的に) |
| 8 再発防止策 | 手順変更、環境変更、その他の対応、再発防止策の評価時期と結果 |
| 9 その他 | 特記すべき事項 |
発生時の状況・原因分析・再発防止策は、日々の介護記録が材料になります。事故の前後の記録をすぐに引き出せるかで、報告の手間が変わります。記録を紙からデータに移す方法は介護記録の電子化、記録の保存期間は介護記録の保存期間で説明しています。
施設で求められる体制:委員会・指針・研修・担当者
特別養護老人ホームなどの施設は、事故の報告だけでなく、事故を防ぐ体制の整備も運営基準で義務付けられています。特養の基準第35条第1項は、次の4つの措置を求めています。
- 事故が起きた場合の対応や報告の方法などを書いた、事故発生の防止のための指針を整備する
- 事故や、事故に至る危険性がある事態が起きたときに報告され、その分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制を整える
- 事故発生の防止のための委員会(テレビ電話装置等を使ってもよい)と従業者への研修を定期的に行う
- これらの措置を適切に実施するための担当者を置く
この体制は施設の報酬にもつながっています。
安全管理体制未実施減算
基準を満たさないと減算
- 1日につき5単位を減算
- 第35条第1項の措置が欠けた翌月から解消した月まで
- 入所者全員が対象
安全対策体制加算
体制を整えると加算
- 20単位
- 入所初日に限り算定
- 担当者の外部研修と、安全管理部門の設置などが要件
どちらも令和3年度介護報酬改定で設けられたもので、介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院が対象です。施設で同じように委員会・指針・研修が求められるものに虐待防止委員会と身体拘束適正化委員会があります。これらの記録は運営指導で確かめられます。
記録の保存:完結の日から2年
事故の状況と事故に際して採った処置の記録は、運営基準で、その完結の日から2年間保存しなければなりません(訪問介護は指定居宅サービス等の運営基準第39条第2項、特養は基準第37条第2項)。市町村が条例でこれより長い期間を定めていることがあるため、介護記録の保存期間の記事で確かめ方を見てください。
これからの動き:国の事故報告システム
国は、事故の情報を全国で集めて分析する仕組みを検討しています。令和7年12月25日の社会保障審議会介護保険部会の意見は、市町村が事業所からの報告を受け付け、都道府県が広域で集計し、国が事故情報の収集(システム・DB構築)と分析・活用、報告様式の標準化を担うという役割分担を示し、「介護サービス情報公表システム」に事故情報を報告するためのサブシステムを新たに作ることが考えられるとしています。2026年10月10日時点で、令和6年11月29日の通知より新しい、事故報告の様式や手続きそのものの通知は見つかっていません。新しい通知は介護保険最新情報として出るため、介護保険最新情報の記事で見る場所と探し方をまとめています。
令和7年11月7日には、厚生労働省が「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」を出しました。平成24年度の特養向けのガイドラインを見直したもので、居宅系・居住系サービスの内容も新たに盛り込んでいます。
事故の記録と見守りに使えるツール
事故報告の材料になる記録を残すツールが介護ソフト、転倒などの事故の予防や発見に使われるのが見守り機器です。介護ソフトの比べ方は介護ソフトの選び方、見守り機器は見守りセンサーの選び方で整理しています。施設の管理者向けの情報は管理者・施設長向け、施設系のサービスは施設系にまとめています。
見守り機器
一覧は見守り機器のカテゴリで比べられます。
介護ソフト
よくある質問
事故報告書は何日以内に出せばよいですか
国の通知では、第1報を事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に出します。第1報には様式の1〜6の項目を可能な限り書き、原因分析と再発防止策は作成次第、追加で報告します。市町村によっては、第一報の後に報告書を出す期限を別に決めています(仙台市は第一報から10日以内)。
病院を受診しなかった転倒も報告が必要ですか
国の通知が原則すべての報告を求めるのは、死亡事故と、医師の診断を受けて投薬・処置など何らかの治療が必要になった事故です。それ以外の事故を報告するかは市町村の取扱いによるので、事業所のある市町村の取扱要領で確かめてください。
事故報告書はどこに出しますか
市町村(保険者)に出します。どの市町村に出すかは、各市町村の取扱要領で確かめてください。運営基準は、市町村のほかに利用者の家族や居宅介護支援事業者などへの連絡も求めています。報告の方法は原則として電子メール等の電磁的方法で、電子申請で受け付けている市町村もあります。
事業者に過失が無い事故も報告しますか
国の通知の報告対象は、事故の結果(死亡、治療が必要になったこと)で決まっていて、過失の有無で分けていません。船橋市のように、事業者側の過失の有無は問わないと明記している市町村もあります。
出典
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1332 介護保険施設等における事故の報告様式等について(通知)」(令和6年11月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001342369.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1436 「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」の策定について(周知)」(令和7年11月7日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001591418.pdf - 厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(令和7年12月25日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622725.pdf - e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037 - e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100039 - 厚生労働省 法令等データベース「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0255&dataType=0&pageNo=1 - 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768899.pdf - 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」の一部改正(令和3年度介護報酬改定)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000772372.pdf - 横浜市「介護保険事業者からの事故報告について」
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/fukushi-kaigo/kaigo/hoken/unei/jiko.html - 仙台市「介護保険施設、事業所等における事故発生時の報告について」
https://www.city.sendai.jp/shidodaini/jigyosha/fukushi/fukushi/koresha/jikohoukoku.html - 船橋市「【事故報告】介護保険事業者等(高齢者施設含む)」
https://www.city.funabashi.lg.jp/jigyou/fukushi_kosodate/001/05/p016596.html
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