虐待防止委員会とは|義務の対象・開催頻度・構成員と未実施減算1%【2026年】

要点
虐待防止委員会とは、介護サービスの運営基準で「虐待の防止のための対策を検討する委員会」と定められた委員会の通称です(解釈通知での呼び名は「虐待防止検討委員会」)。令和3年度介護報酬改定で、委員会の定期的な開催・指針の整備・研修の定期的な実施・担当者の配置の4つの措置がすべての介護サービス事業者に求められ、3年間の努力義務の期間を経て令和6年(2024年)4月1日から義務になりました。令和6年度介護報酬改定では、4つの措置のどれか1つでも講じていないと、利用者全員の所定単位数から100分の1(1%)を減らす「高齢者虐待防止措置未実施減算」ができています。開催頻度は「定期的に」とだけ決められていて回数の定めはなく、オンラインでの開催や、他の会議と一体での運営もできます(2026年10月8日時点で確認した基準省令・解釈通知・公式Q&Aの内容)。
- 4つ講じる措置委員会・指針・研修・担当者
- 1つでも欠けると減算Q&A(Vol.1)問167
- 1%減らす割合所定単位数の100分の1
虐待防止委員会とは:運営基準の規定
運営基準の「虐待の防止」の条に、4つの措置の1つとして定められています。訪問介護の例(指定居宅サービス等基準 第37条の2)では、次のとおりです。
指定訪問介護事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。 一 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。 二 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。 三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。 四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
解釈通知(老企第25号)では、この委員会を「虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討する委員会」と説明しています。あわせて、運営規程(訪問介護では第29条)に定める事項にも「虐待の防止のための措置に関する事項」が入っています。
どのサービスに義務があるか
すべての介護サービスの施設・事業者が対象です。厚生労働省の高齢者虐待対応マニュアル(令和7年3月)では、令和6年4月から全ての介護サービス施設・事業者の運営基準に基づく高齢者虐待防止措置が義務になったと説明しています。減算の留意事項(介護保険最新情報Vol.1213)が根拠として挙げている条文は、たとえば次のとおりです。
| サービス | 根拠の条文 |
|---|---|
| 訪問介護などの居宅サービス | 指定居宅サービス等基準 第37条の2(各サービスで準用) |
| 地域密着型サービス | 地域密着型サービス基準 第3条の38の2(各サービスで準用) |
| 居宅介護支援 | 指定居宅介護支援等基準 第27条の2 |
| 介護予防サービス | 指定介護予防サービス等基準 第53条の10の2 |
| 介護予防支援 | 介護予防支援基準 第26条の2 |
| 介護老人福祉施設 | 指定介護老人福祉施設基準 第35条の2 |
例外は居宅療養管理指導です。令和3年の改正省令の附則第2条(令和6年改正後)で、居宅療養管理指導(介護予防を含む)は令和9年3月31日まで「講じるように努めなければ」と読み替えられ、努力義務のままになっています。厚生労働省は、事業所のほとんどがみなし指定であることなどを理由に、経過措置を3年間延長したと説明しています。
サービス種別ごとのツールは、居宅介護支援・訪問系・通所系・施設系の各ページにまとめています。
いつから義務になったか
令和3年4月1日施行の改正省令で4つの措置が新設され、附則第2条で令和6年3月31日までは努力義務とされました。令和6年4月1日からは「講じなければならない」義務です。
同じ令和6年4月から、措置を講じていない場合の減算も始まっています(後述)。
開催頻度・構成員・開催方法の決まり
回数の定めは無く、「定期的に」開くことが求められています。解釈通知で決められている内容は次のとおりです。
| 項目 | 解釈通知の定め |
|---|---|
| 開催頻度 | 定期的に開催することが必要(回数の定めはない) |
| 構成員 | 管理者を含む幅広い職種で構成し、構成メンバーの責務と役割分担を明確にする |
| 外部の人 | 虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましい |
| オンライン開催 | テレビ電話装置等を使って開ける。その際は「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を守る |
| 他の委員会との一体運営 | 他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営してよい |
| 開く単位 | 事業所に求められるが、他のサービス事業者との連携等で行ってもよい |
| 結果の扱い | 検討した結果(虐待に対する体制、再発防止策等)は従業者に周知徹底する |
| 個別事案の情報 | 虐待等の事案は複雑で機微なため、一律に従業者に共有すべき情報とは限らず、個別の状況に応じて慎重に対応する |
介護老人福祉施設の解釈通知(老企第43号)では、運営委員会など他の委員会とは独立して設置・運営することが必要としたうえで、関係する職種や取り扱う事項が相互に関係が深い会議体があれば、一体的に設置・運営してよいとしています。
厚生労働省の高齢者虐待対応マニュアルでは、研修等は、高齢者虐待防止検討委員会と身体的拘束等適正化検討委員会で一体的に行えるとしつつ、高齢者虐待は身体的拘束等に関わるものだけではないため、どちらから見ても不足のない研修内容にする必要があるとしています。
小規模な事業所の場合
令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)の問170では、従業者が実質1名の居宅療養管理指導や居宅介護支援などでも、規模の大小に関わりなく委員会と研修を定期的に実施してほしいとしています。開き方の例として挙げられているのは次の3つです。
- 法人内の複数の事業所による合同開催
- 感染症対策委員会など、他の委員会との合同開催
- 関係機関等の協力を得た開催
委員会で検討すること
解釈通知では、虐待防止検討委員会で検討する事項として次の7つを挙げています。
- 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること
- 虐待の防止のための指針の整備に関すること
- 虐待の防止のための職員研修の内容に関すること
- 虐待等について、従業者が相談・報告できる体制整備に関すること
- 従業者が高齢者虐待を把握した場合に、市町村への通報が迅速かつ適切に行われるための方法に関すること
- 虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策に関すること
- 再発の防止策を講じた際の、その効果についての評価に関すること
5番目の通報について、高齢者虐待対応マニュアルでは、養介護施設従事者等は虐待を受けたと思われる高齢者を見つけたら速やかに市町村へ通報する義務がある(高齢者虐待防止法第21条第1項)と説明しています。
指針・研修・担当者の決まり
委員会以外の3つの措置も、解釈通知で中身が決められています。
虐待の防止のための指針
指針には、次のような項目を盛り込むこととされています。
- 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
- 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
- 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
- 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
- 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
- 成年後見制度の利用支援に関する事項
- 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
- 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
- その他虐待の防止の推進のために必要な事項
虐待の防止のための研修
指針に基づいた研修プログラムを作り、定期的な研修を実施するとともに、新規採用時にも研修を実施することが重要とされています。研修の実施内容は記録が必要で、事業所内での研修でかまいません。定期的な研修の回数は、サービスによって違います。
訪問・通所系など
年1回以上
- 訪問介護などの解釈通知(老企第25号)
- 新規採用時にも研修を実施
- 実施内容を記録する
施設・特定施設
年2回以上
- 介護老人福祉施設は老企第43号
- 特定施設も解釈通知で年2回以上
- 新規採用時にも研修を実施
介護老人保健施設と介護医療院の減算は、介護保険最新情報 Vol.1213 で介護老人福祉施設の項(研修は年2回以上)を準用するとされています。
担当者
4つの措置を適切に実施するための担当者を置きます。虐待防止検討委員会の責任者と同じ従業者が務めることが望ましいとされています。
令和6年3月の解釈通知の改正で、担当者は「専任の」担当者から「担当者」に改められました。同じ事業所内で、身体的拘束等適正化担当者・感染対策担当者・事故の発生又はその再発を防止するための措置を適切に実施するための担当者などを兼ねることや、他の事業所・施設等の担当者を兼ねることも、職務に支障がなければよいとされています。ただし、日常的に兼務先の各事業所内の業務に従事していて、利用者や事業所の状況を適切に把握している人など、職務に支障がないと考えられる人を選ぶこととされています。
高齢者虐待防止措置未実施減算:何%・どういう場合か
4つの措置のうち1つでも講じていない場合に、利用者全員について所定単位数の100分の1(1%)を減らす減算です。令和6年度介護報酬改定(令和6年厚生労働省告示第86号)で新設されました。厚生労働省の改定事項の資料では、所定単位数から平均して7単位程度/(日・回)の減算になると説明しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減算の割合 | 所定単位数の100分の1に相当する単位数 |
| 対象 | 全サービス(居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く) |
| 経過措置 | 福祉用具貸与は3年間(令和9年3月まで) |
| 減算になる場合 | 委員会を定期的に開いていない、指針を整備していない、研修を定期的に実施していない(訪問・通所系などは年1回以上、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院は年2回以上)、担当者を置いていない、のどれか |
| 減算の範囲 | 利用者(入所者)全員の所定単位数 |
虐待が起きていなくても減算になる
留意事項(Vol.1213)では、この減算は事業所で高齢者虐待が発生した場合ではなく、措置を講じていない場合に適用すると書かれています。Q&A(Vol.1)の問167でも、虐待が発生していなくても全ての措置がなされていなければ減算の対象で、1つでも講じられていなければ減算になるとされています。
減算の期間と改善計画
- 措置を講じていない事実が生じる運営指導等で分かった場合は、発見した日の属する月が「事実が生じた月」
- 改善計画を都道府県知事に出す事実が生じた後、速やかに
- 事実が生じた月の翌月から減算改善計画を出したかどうかに関わらず減算してよい(問169)
- 3月後に改善状況を報告する事実が生じた月から3月後
- 改善が認められた月まで減算が続く
Q&A(Vol.1)の問168では、運営指導等で措置を講じていない事実が見つかった場合、過去にさかのぼって減算することはできず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になるとされています。
委員会と研修の記録の残し方
基準省令の条文には、委員会の議事録の保存期間は書かれていません。一方で、記録が必要とされている場面があります。
- 研修: 解釈通知で、研修の実施内容を記録することが必要とされています
- 合同で開く場合: Q&A(Vol.1)の問170で、委員会や研修を合同で開くときは、参加した各事業所の従事者と実施した内容等が記録で確認できるようにしておくこととされています
- 減算の確認: 減算は「委員会を定期的に開催していない」などの事実で判断されます。運営指導等で確認されたときに示せるよう、開いた日・出席者・検討した内容・従業者への周知の方法を残しておくと説明しやすくなります
運営基準で保存が決められている記録と保存期間は、介護記録の保存期間で整理しています。令和6年度改定では、介護サービス情報公表システムに登録する事項に虐待防止の取組状況を加えるとされています(介護サービス情報公表制度)。
委員会の議事録・研修の記録・指針を紙で回している事業所は、介護ソフトやスタッフ間の連絡ツールでまとめると、周知の記録も一緒に残せます。カテゴリ全体は介護ソフトとコミュニケーション、管理者向けのツールは管理者・施設長向けにまとめています。
障害福祉サービスにも同じ義務と減算がある
障害福祉サービスでも、虐待防止措置は令和4年度から義務になっています。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要では、全サービスを対象に、次の3つを満たしていない場合に所定単位数の1%を減らす「虐待防止措置未実施減算」を新設したとしています。
- 虐待防止委員会を定期的に開催し、その結果を従業者に周知徹底すること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- 上記の措置を適切に実施するための担当者を置くこと
同じ概要では、虐待防止委員会(身体拘束適正化委員会を含む)で外部の第三者や専門家の活用に努めることを、指定基準の解釈通知に書くとしています。障害福祉の事業所向けのツールは障害福祉、ソフトの選び方は障害福祉ソフトの選び方へ。
委員会の位置づけが重くなっている背景
厚生労働省の令和8年3月31日の老健局長通知では、令和6年度の調査で、養介護施設従事者等による虐待の相談・通報件数が3,633件、虐待判断件数が1,220件で、いずれも過去最多になったとしています。過去に虐待が発生した施設等での再発も高い水準で推移しているとして、介護施設等での虐待防止の対応の強化を求めています。
生産性向上の取組を検討する委員会と一体で運営を考えている事業所は、生産性向上委員会の決まりもあわせて確認してください。
よくある質問
虐待が起きていなければ減算されませんか
減算されます。Q&A(Vol.1)の問167で、高齢者虐待が発生していなくても、委員会の開催・指針の整備・研修の定期的な実施・担当者の配置のどれか1つでも講じられていなければ減算になるとされています。
職員が1人の事業所でも委員会を開く必要がありますか
必要です。Q&A(Vol.1)の問170で、規模の大小に関わりなく委員会と研修を定期的に実施してほしいとされています。法人内の複数事業所での合同開催や、感染症対策委員会など他の委員会との合同開催、関係機関の協力を得た開催が例に挙がっています。
身体拘束の委員会と一緒に開いてもよいですか
一体的に運営できます。解釈通知では、他の会議体と一体的に設置・運営してよいとされています。厚生労働省のマニュアルでは、研修等を身体的拘束等適正化検討委員会と一体的に行う場合も、虐待は身体的拘束等に関わるものだけではないため、どちらから見ても不足のない研修内容にするよう求めています。
運営指導で未実施が見つかったら、過去の分まで減算されますか
さかのぼっては減算されません。Q&A(Vol.1)の問168で、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になるとされ、その翌月から改善が認められた月まで減算されます。
出典
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037 - 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令」(令和3年厚生労働省令第9号)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000753779.pdf - 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)の改正(令和3年)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000772386.pdf - 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(老企第43号)の改正(令和3年)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000772408.pdf - 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)の改正(令和6年3月15日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227935.pdf - 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」の改正(令和6年3月15日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227943.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1213 「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準…の制定に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について」(令和6年3月15日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001227724.pdf - 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230329.pdf - 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和6年厚生労働省告示第86号)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227814.pdf - 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」(令和6年3月15日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230308.pdf - 厚生労働省老健局「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について」(令和7年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001452977.pdf - 厚生労働省老健局長通知「令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」の結果及び高齢者虐待の状況等を踏まえた対応の強化について」(令和8年3月31日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001684406.pdf - 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf
制度・料金・製品の情報は変わることがあります。記事は2026年10月8日時点の公開情報にもとづきます。手続きの前に、出典の原文と自治体・提供元の最新の案内をご確認ください。誤りに気づいた方はお問い合わせからお知らせください。








