介護保険の住宅改修とは|対象工事6つ・支給限度基準額20万円・事前申請の流れと理由書【2026年】

要点
介護保険の住宅改修は、要介護者・要支援者が自宅に手すりを付ける、段差をなくすなどの工事をしたとき、20万円を上限に費用の原則9割が支給される制度です(介護保険法第45条・第57条、平成12年厚生省告示第35号、2026年11月5日時点)。工事の前に市町村へ申請するのが原則で、ケアマネジャーなどが書く理由書が要ります。この記事では、対象になる工事、上限額、申請の流れ、対象にならない場合を、法令・告示・通知の原文から整理します。
- 20万円支給限度基準額平成12年厚生省告示第35号
- 18万円9割給付のときの上限8割は16万円、7割は14万円
- 6つ対象になる工事平成11年厚生省告示第95号
- 約413億円令和5年度の費用額第259回分科会資料7
介護保険の住宅改修とは
介護保険の住宅改修は、居宅介護住宅改修費(要支援者は介護予防住宅改修費)として費用の一部が支給される保険給付です。介護保険法第45条は、居宅要介護被保険者が「手すりの取付けその他の厚生労働大臣が定める種類の住宅改修」を行ったときに支給すると定め、市町村が必要と認める場合に限るとしています。要支援者には、第57条が同じ仕組みの介護予防住宅改修費を定めています。
対象は本人が現に居住する住宅で、心身の状況や住宅の状況などを勘案して必要と認められる場合に限られます(施行規則第74条)。支給額は費用の100分の90で(第45条)、一定以上の所得がある人は100分の80または100分の70です(第49条の2。要支援者は第59条の2)。
対象になる工事:6つ
対象は、平成11年厚生省告示第95号が掲げる6つの工事です。それぞれの範囲は、老企第34号の通知が具体的に示しています。
| 工事 | 含まれるもの | 除かれるもの |
|---|---|---|
| 手すりの取付け | 廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路等への取付け | 福祉用具貸与の「手すり」に当たるもの |
| 段差の解消 | 敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げ等 | 福祉用具貸与の「スロープ」や特定福祉用具の「浴室内すのこ」を置くもの。昇降機、リフト、段差解消機など動力で段差を解消する機器の設置工事 |
| 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 | 居室の畳敷から板製床材・ビニル系床材等への変更、浴室の床材を滑りにくいものへ変更、通路面を滑りにくい舗装材へ変更 | — |
| 引き戸等への扉の取替え | 開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等に取り替える。扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置 | 自動ドアにした場合の動力部分 |
| 洋式便器等への便器の取替え | 和式便器から洋式便器への取替え、便器の位置や向きの変更。和式から暖房便座・洗浄機能等が付いた洋式便器への取替え | 腰掛便座の設置。すでに洋式便器である場合の暖房・洗浄機能の付加。水洗化・簡易水洗化の部分 |
| 上の5つに付帯して必要となる住宅改修 | 手すりのための壁の下地補強、浴室の床のかさ上げに伴う給排水設備工事、スロープの柵や立ち上がりの設置、床材変更のための下地の補修・根太の補強・路盤の整備、扉の取替えに伴う壁又は柱の改修、便器の取替えに伴う給排水設備工事・床材の変更 | 給排水設備工事のうち水洗化・簡易水洗化に係るもの |
取付けに工事を伴わない手すりやスロープは、住宅改修ではなく福祉用具貸与の対象です(スロープの一部は特定福祉用具販売の対象にもなっています)。
支給限度基準額:20万円
支給の対象になる費用の上限(支給限度基準額)は20万円です(平成12年厚生省告示第35号)。厚生労働省の資料は、これを「生涯20万円(要支援、要介護区分にかかわらず定額)」と説明しています。
- 保険給付は原則9割で上限18万円。所得に応じて8割(上限16万円)、7割(上限14万円)
- 20万円の範囲内であれば、複数回に分けて申請できる
- 市町村は条例で、この基準額を超える額を支給限度基準額にできる(介護保険法第45条第6項)
- 地方公共団体が、20万円を超える工事などに独自の助成を行うこともできる(老企第42号)
区分支給限度基準額とは別枠です。居宅サービスの上限との関係は区分支給限度基準額の記事で説明しています。
20万円をもう一度使える場合:3段階以上の重度化と転居
20万円を使い切っていても、介護の必要の程度が大きく上がったときと転居したときは、改めて20万円まで支給を受けられます(老企第42号)。
1つ目は、「介護の必要の程度」の段階が、初めて住宅改修費が支給された住宅改修の着工日と比べて3段階以上上がった場合です。通知はこれを「3段階リセットの例外」と呼び、この取扱いは1回に限られます。たとえば要支援1から要介護2になった場合、段階は2つしか上がらないので当てはまりません。
| 段階 | 要介護等状態区分 |
|---|---|
| 第一段階 | 要支援1 |
| 第二段階 | 要支援2、要介護1 |
| 第三段階 | 要介護2 |
| 第四段階 | 要介護3 |
| 第五段階 | 要介護4 |
| 第六段階 | 要介護5 |
2つ目は転居した場合です。支給限度額の管理は現に居住している住宅の住宅改修費だけを対象にするため(施行規則第76条)、転居後の住宅では改めて20万円まで支給を受けられます。
申請の流れ:工事の前に市町村へ
住宅改修費は、工事の前に市町村へ申請し、工事の後に領収証などを出して支給を受けます(施行規則第75条)。厚生労働省の資料が示す流れは次のとおりです。
- ケアマネジャー等に相談
- 施工事業者の選択・見積もり依頼
- 市町村へ工事前に申請理由書などを提出
- 市町村が内容を確認結果を教示
- 改修工事の施工・完成施工事業者へ支払
- 市町村へ工事後に支給申請領収証などを提出
- 住宅改修費の支給市町村が必要と認めた場合
工事の前
- 住宅改修の内容、箇所、規模と施工者
- 費用の見積りと着工予定日
- 住宅改修が必要な理由書
- 住宅改修の予定の状態が確認できるもの
工事の後
- 住宅改修に要した費用、着工日と完成日
- 領収証(工事費内訳書を添付)
- 完成後の状態を確認できる書類(改修前後の写真)
写真は、便所・浴室・廊下など箇所ごとの改修前と改修後のもので、原則として撮影日がわかるものとされています(老企第42号)。住宅の所有者が本人でない場合は、所有者の承諾書も要ります。
やむを得ない事情があるときは、工事の前に出す書類のうち、住宅改修の内容などを書いた申請書と理由書を、工事の後に出せます(施行規則第75条第2項)。老企第42号は、入院・入所している人が退院・退所後の受け入れのためにあらかじめ着工する必要がある場合などを挙げています。見積りや予定の状態が確認できるものは、この扱いに含まれません。
理由書を書ける人
理由書は、介護支援専門員その他の専門的な知識・経験を有する者が作ります。厚生労働省の資料は、作成者として次の人を挙げています。
- 介護支援専門員
- 地域包括支援センターの担当職員
- 作業療法士
- 福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上その他これに準ずる資格等を有する者
介護支援専門員などが理由書を作る業務は居宅介護支援・介護予防支援の一環なので、被保険者から別途費用を徴収することはできません(老企第42号)。また、事前申請時の見積書類は国が様式を示しており、介護支援専門員などには、複数の事業者から見積もりを取ることを利用者に説明する義務があります(第259回介護給付費分科会資料7)。
対象にならないもの・注意する場合
新築や居室の増築、設計だけの費用は対象になりません。老企第42号が示す取扱いは次のとおりです。
- 住宅の新築は対象外。増築で新たに居室を設ける場合も対象外
- 住宅改修を伴わない設計・積算のみの費用は対象外
- 本人や家族が自分で工事をした場合は、材料の購入費が対象になる
- 1つの住宅に複数の被保険者がいる場合は、被保険者ごとに申請できる。同時に行うときは、範囲が重複しないように申請する
利用の状況:費用額は約413億円
住宅改修費の費用額は令和5年度で約413億円で、ここ数年は横ばいです(第259回介護給付費分科会資料7、介護予防を含む)。給付件数は総数432千件で、要介護2以下の人が約8割を占めます。
福祉用具貸与事業所と住宅改修の記録
手すりやスロープは、取付けに工事を伴うものが住宅改修、伴わないものが福祉用具貸与の対象です(老企第34号)。貸与の側で利用者の住環境を見る福祉用具専門相談員の資格と業務、貸与の計画やモニタリングの記録を扱う福祉用具貸与向け介護ソフトの選び方もあわせて確認してください。
福祉用具貸与に対応した介護ソフトは次のとおりです。住宅改修の見積や申請書類を扱えるかどうかは掲載データでは確かめていないので、各製品の公式サイトで確かめてください。
対応製品は福祉用具貸与向け介護ソフトの比較と福祉用具貸与の立場からの探し方で絞り込めます。
よくある質問
介護保険の住宅改修はいくらまで出ますか
支給限度基準額は20万円です。保険給付は原則9割なので上限は18万円で、所得に応じて8割(上限16万円)、7割(上限14万円)になります。20万円の範囲内なら複数回に分けて申請できます。
工事が終わってから申請できますか
原則は工事の前に市町村へ申請します。やむを得ない事情があるときに限り、工事の前に出す書類のうち、住宅改修の内容などを書いた申請書と理由書を、工事の後に出せます(施行規則第75条第2項)。老企第42号は、入院・入所している人が退院・退所後の受け入れのためにあらかじめ着工する必要がある場合などを挙げています。
20万円を使い切ったあと、もう一度使えますか
「介護の必要の程度」の段階が最初の住宅改修の着工日と比べて3段階以上上がった場合(1回に限る)と、転居した場合は、改めて20万円まで支給を受けられます。段階は6つで、要支援2と要介護1は同じ段階として数えます。
新築や増築は対象になりますか
住宅の新築は対象になりません。増築で新たに居室を設ける場合も対象外です。
出典
- e-Gov法令検索「介護保険法(平成9年法律第123号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123 - e-Gov法令検索「介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 - 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html - 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001016043.pdf - 厚生労働省「厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成11年厚生省告示第95号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506169.pdf - 厚生労働省「居宅介護住宅改修費支給限度基準額及び介護予防住宅改修費支給限度基準額(平成12年厚生省告示第35号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506184.pdf - 厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(平成12年老企第42号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506185.pdf - 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(平成12年老企第34号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001506170.pdf - 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料7 福祉用具・住宅改修」(令和8年6月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716098.pdf
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