クラウド型の介護ソフト|責任分界・保存先・認証・BCPの確かめ方【2026年】

要点
クラウド型の介護ソフトは、自分の事業所にサーバーを置かず、提供元のサーバーに記録を預けてブラウザやアプリから使う形です。厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版」(令和8年6月)は介護事業者も対象で、記録をクラウドに預けても管理の責任は事業所に残るとし、委託先の体制・バックアップ・認証・サーバーの設置場所などを確かめることを求めています。2026年10月23日時点で当サイトに掲載している介護ソフト85本のうち、対応環境を公式情報から確認できた56本の中でクラウド型は38本、自分のパソコンにインストールする形は18本です。この記事では、クラウド型を選ぶときにガイドラインが求める確認点と、掲載している製品の公開情報の傾向を整理します。
クラウド型とインストール型の違い
| 比べる点 | クラウド型 | インストール型 |
|---|---|---|
| 記録の保存先 | 提供元のサーバー(データセンター) | 事業所のパソコンやサーバー |
| 使う端末 | ブラウザ、またはスマートフォン・タブレットのアプリ | ソフトを入れたパソコン |
| 更新(制度改定・法改正) | 提供元がサーバー側で行う | 更新プログラムを事業所で適用する |
| バックアップ | 提供元が行う(内容と頻度は契約で確かめる) | 事業所で行う |
| 障害時 | 提供元の復旧を待つ。回線が止まると使えない | 事業所で復旧する。回線が止まっても使える |
| 料金 | 月額が中心 | 導入時の一括費用、または月額・年額 |
どちらが安全かは一概に言えず、ガイドラインも「クラウドだから安全」「自前だから安全」とはしていません。クラウド型では、自分で運用しないぶん提供元が何をどこまで担うのかを契約で確かめることが中心になります。
ガイドライン第7.0版は介護事業者も対象
ガイドラインのQ&Aは、「介護事業者は本ガイドラインを遵守する必要があるか」という問いに、介護事業者が医療情報を情報システムで扱う場合は対象だと答えています。介護事業者は「医療機関等」に含まれ、医療情報を含む文書は保存義務の有無を問わず対象になるためです。介護記録の電子化で守るルール全体は介護記録の電子化の記事にまとめているので、この記事ではクラウドに関わる部分だけを取り上げます。
責任分界:預けても責任は残る
企画管理編は、クラウドサービスを使うときの責任分界を、SaaS・PaaS・IaaSの区分ごとに整理しています。Q&Aは、委託したクラウド型の電子カルテの提供元から情報が漏えいした場合を例に、委託元の医療機関等も情報の管理主体として責任を負うと答えています。介護事業者も「医療機関等」に含まれるので、介護ソフトでも同じ考え方です。提供元に任せきりにはできず、何を提供元が担い、何を事業所が担うのかを契約で分けておくことが前提です。
提供元(委託先)
サーバー・アプリの運用
- サーバーの設置と保守
- バックアップの実施
- アプリの更新とぜい弱性への対応
- 障害時の復旧
事業所(委託元)
管理の責任
- 誰がアクセスできるかの管理
- 端末とパスワードの管理
- 委託先を確かめ、契約で定める
- 漏えい時の責任と対応
委託先を確かめる項目
企画管理編は、外部の事業者に情報を保存させる(外部保存)ときに委託先について確かめる事項として、次のような項目を挙げています。クラウド型の介護ソフトを契約する前に、提供元の公開情報と契約書で1つずつ確かめます。
| 確かめる項目 | 見るもの |
|---|---|
| 安全管理の方針と体制 | 提供元のセキュリティポリシー、責任者と体制 |
| バックアップの方法と頻度 | 契約書、サービス仕様書 |
| 信用度・財務状況 | 提供元の会社情報。サービスが止まったときにデータを返してもらえるか |
| 第三者認証 | プライバシーマーク、ISMS(ISO/IEC 27001)。無い場合は ISMAP、JASA クラウドセキュリティ(CS)ゴールドマーク、FedRAMP、SOC2/3、HISPROなどの評価 |
| サーバーの設置場所(地域、国) | 国外に置く場合は、その国の法律が適用される可能性 |
| 適用される法律 | 国内法が適用されるか。契約に、提供元が分析など別の目的で情報を扱わないことなどを定めているか |
これとは別に、企画管理編は情報機器等の安全性の確認として、クラウドサービスでは利用できる容量に上限があることが想定されるため、可用性のリスクを減らすよう適宜確認することも求めています。
Q&Aは、ISMS認証を取得していることはサービスの安全性を直接保証するものではなく、認証のリストに載っていることだけでは確認として足りない、とも述べています。認証の有無は入口で、実際の運用を契約と資料で確かめる、という読み方です。確認の進め方は介護ソフトのセキュリティ確認の記事に10項目でまとめています。
なお、Q&Aは、クラウドサービス等を利用し契約に基づいて事業所の外部に情報を保存すること自体は、ガイドラインが制限する「持出し」とは区別して考えるとしています。契約した提供元のサーバーに保存することと、記録を端末に入れて事業所の外へ持ち出すことは別の扱いで、後者はシステム運用編の持出しのルールに従います。
掲載している介護ソフトの公開情報の傾向
2026年10月23日時点で当サイトに掲載している介護ソフト85本について、公式サイトなど公開情報から確認できた範囲の数です。
- 38本クラウド型対応環境を確認できた56本のうち。インストール型は18本
- 11本保存先を国内と公表残る74本は公開情報に記載なし
- 22本ISMS取得を公表プライバシーマーク取得の公表は34本
| 項目 | 本数 |
|---|---|
| クラウド型(対応環境を確認できた56本のうち) | 38本 |
| うち料金を公式サイトに載せている | 11本 |
| データの保存先を国内と公表している | 11本 |
| データの保存先の記載なし | 74本 |
| ISMS(ISO/IEC 27001)取得を公表している | 22本 |
| プライバシーマーク取得を公表している | 34本 |
| 二要素認証について公開情報に記載がある | 0本 |
保存先と二要素認証は、公開情報だけでは判断できない製品が大半です。公式サイトに書いていないことは、ガイドラインが求める確認項目として提供元に直接聞くことになります。当サイトの掲載情報は公式サイトと公開資料から確認できた範囲で、記載がないことは「対応していない」ではなく「公開情報で確認できなかった」という意味です。
回線が止まったときと、BCP
クラウド型は回線が止まると使えません。指定居宅サービスの運営基準は、感染症や非常災害の発生時にサービスを継続するための業務継続計画(BCP)の策定・研修・訓練を義務づけています(第30条の2)。クラウド型を使うなら、BCPの中に回線や提供元の障害時に記録と請求をどう続けるかを書いておきます。
- 障害の想定を書く回線の停止、提供元のサーバー障害、端末の故障の3つを分ける
- 紙や別端末の代替を決める記録は紙の様式、請求は締め日までの猶予を確かめる
- 復旧の連絡先を決める提供元の障害時の連絡先と復旧目標(稼働率・復旧時間)を契約で確かめる
- データの取り出しを確かめる解約時や提供元の事業終了時に、データをどの形式で返してもらえるか
- 訓練する年に1回以上、代替手順で記録と請求を回してみる
補助の対象と、選ぶときの順番
都道府県の介護テクノロジー導入支援事業では、ICTの補助対象として介護ソフト・タブレット端末・インカム・クラウドサービス・業務効率化に資するバックオフィスソフト(転記等の業務が発生しない環境ができている場合に限る)などが挙げられています(厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(令和7年度当初予算)」)。クラウド型の月額利用料がどこまで対象になるかは都道府県の要綱で異なるため、介護テクノロジーの補助金の記事から自分の都道府県の要綱に当たります。
選ぶ順番は、まず介護ソフトの選び方の記事のとおり対象サービス種別と請求・記録の範囲を決め、そのうえでクラウド型なら上の確認項目を提供元に確かめる、という流れです。料金の見方は介護ソフトの料金の記事、無料で試せる製品は無料で試せる介護ソフトの記事にまとめています。
介護ソフトの一覧は介護ソフトの比較ページに、事務・請求を担当する方向けのツールは事務担当者のページに、経営者・管理者向けは管理者のページにまとめています。
よくある質問
クラウド型の介護ソフトに記録を預けたら、漏えいの責任は提供元が負いますか?
ガイドライン第7.0版のQ&Aは、委託したクラウド型の電子カルテの提供元から情報が漏えいした場合を例に、委託元の医療機関等(介護事業者を含む)も情報の管理主体として責任を負うとしています。提供元に任せきりにはできず、契約で責任の分担を定め、委託先の体制を確かめることが事業所の責任です。
ISMSやプライバシーマークを取っている提供元なら安心ですか?
Q&Aは、ISMS認証の取得はサービスの安全性を直接保証するものではなく、認証のリストに載っていることだけでは確認として足りないとしています。認証は入口として見て、バックアップ・保存先・適用される法律・契約の内容を個別に確かめます。
サーバーが国外にある場合は何を確かめますか?
企画管理編は、委託先について確かめる事項にサーバーの設置場所(地域、国)と、国外の法律が適用される可能性を挙げています。保存先を国内と公表している製品は、2026年10月23日時点で当サイトの掲載85本のうち11本で、残りは公開情報に記載がないため提供元に直接確かめます。
回線が止まったときの備えは何をすればよいですか?
指定居宅サービスの運営基準(第30条の2)が義務づける業務継続計画に、回線や提供元の障害時に記録と請求をどう続けるかを書き、年に1回以上は代替手順で訓練します。契約では、障害時の連絡先、復旧目標、解約時のデータの返し方を確かめておきます。
出典
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(令和8年6月)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html - 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 概説編」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716290.pdf - 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 企画管理編」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716292.pdf - 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 システム運用編」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716295.pdf - 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドラインQ&A(令和8年9月)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001752355.pdf - e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037 - 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(令和7年度当初予算)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001476528.pdf
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