介護老人保健施設(老健)とは|在宅復帰の施設類型(超強化型〜その他型)、人員基準、報酬、施設数、特養・介護医療院との違い【2026年】

要点
介護老人保健施設(老健)は、要介護者のうち「主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者」に、施設サービス計画に基づいて看護・医学的管理の下における介護・機能訓練・その他必要な医療と日常生活上の世話を行う介護保険施設です(介護保険法第8条第28項)。開設には都道府県知事の許可が必要です(同法第94条第1項)。医師は常勤換算で入所者100人に1人以上、看護・介護職員は3人に1人以上を置き、療養室は定員4人以下・1人あたり8㎡以上です。基本報酬は、在宅復帰率やベッド回転率などを点数化した「在宅復帰・在宅療養支援等指標」で超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型の5つの類型に分かれます。施設数は令和6年10月1日時点で4,214施設です。
老健とは
介護保険法第8条第28項は、介護老人保健施設の目的を「看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話」と定め、対象を、主として心身の機能の維持回復を図り居宅での生活を営むことができるようにするための支援が必要な要介護者としています。厚生労働省の第260回介護給付費分科会資料(令和8年7月)は、入所者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指す施設」と説明しています。
同資料によると、老健には55.3%が病院から、35.1%が本人の家等から入所し、36.3%が病院へ、32.2%が本人の家等へ退所しています。病院と在宅の間に立ち、リハビリテーションをして家に戻す役割が、特養や介護医療院との違いです。
- 病院入所者の55.3%が病院から
- 入所
- 老健看護・医学的管理の下の介護とリハビリテーション
- 退所
- 本人の家等退所先の32.2%。在宅復帰が目標
人員基準
職員の配置は「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成11年厚生省令第40号)第2条で定められています。入所者数は前年度の平均値で計算し、常勤換算方法を使います。
| 職種 | 配置基準(基準第2条第1項) |
|---|---|
| 医師 | 常勤換算で、入所者の数を100で除して得た数以上 |
| 薬剤師 | 施設の実情に応じた適当数 |
| 看護職員・介護職員 | 常勤換算で、入所者3人またはその端数を増すごとに1人以上。看護職員は看護・介護職員の総数の7分の2程度、介護職員は7分の5程度 |
| 支援相談員 | 1人以上(入所者100人超の場合は、常勤1人に加え、常勤換算で100を超える部分を100で除した数以上) |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 常勤換算で、入所者の数を100で除して得た数以上 |
| 栄養士または管理栄養士 | 入所定員100人以上の施設で1人以上 |
| 介護支援専門員 | 1人以上(入所者100人またはその端数を増すごとに1人が標準) |
介護支援専門員は専従の常勤が原則です(同条第5項)。病院や介護医療院に併設するサテライト型小規模老健・医療機関併設型小規模老健には、本体施設の職員で兼ねられる別の定めがあります(同条第6項・第7項)。
施設・設備の基準
同基準第3条は、療養室・診察室・機能訓練室・談話室・食堂・浴室・レクリエーション・ルーム・洗面所・便所・サービス・ステーション・調理室・洗濯室または洗濯場・汚物処理室を備えることを求めています。
- 療養室: 1室の定員は4人以下、入所者1人あたりの床面積は8㎡以上。出入口の1つ以上は、避難上有効な空地・廊下・広間に直接面して設ける
- 機能訓練室: 1㎡に入所定員数を乗じた面積以上(サテライト型・医療機関併設型小規模老健など一部は40㎡以上)
- 食堂: 2㎡に入所定員数を乗じた面積以上
- 談話室: 入所者同士や入所者と家族が談話を楽しめる広さ
- 廊下: 幅1.8m以上、中廊下は2.7m以上(同基準第4条)
療養室の「8㎡以上」は、後述する室料負担の対象を分ける基準にもなっています。
施設類型と基本報酬:在宅復帰・在宅療養支援等指標
老健の基本報酬は、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」の点数で施設類型が決まります。指標は10項目の点数を足し合わせ、最高90点です。
| 項目 | 配点(令和6年度改定後) |
|---|---|
| ①在宅復帰率 | 50%超 20点、30%超 10点、30%以下 0点 |
| ②ベッド回転率 | 10%以上 20点、5%以上 10点、5%未満 0点 |
| ③入所前後訪問指導割合 | 35%以上 10点、15%以上 5点、15%未満 0点 |
| ④退所前後訪問指導割合 | 35%以上 10点、15%以上 5点、15%未満 0点 |
| ⑤居宅サービスの実施数 | 3サービス 5点、2サービス(訪問リハビリテーションを含む)3点、2サービス 1点、0・1サービス 0点 |
| ⑥リハ専門職の配置割合 | 5以上(PT・OT・STいずれも配置)5点、5以上 3点、3以上 2点、3未満 0点 |
| ⑦支援相談員の配置割合 | 3以上(社会福祉士の配置あり)5点、3以上(配置なし)3点、2以上 1点、2未満 0点 |
| ⑧要介護4または5の割合 | 50%以上 5点、35%以上 3点、35%未満 0点 |
| ⑨喀痰吸引の実施割合 | 10%以上 5点、5%以上 3点、5%未満 0点 |
| ⑩経管栄養の実施割合 | 10%以上 5点、5%以上 3点、5%未満 0点 |
- 70以上超強化型在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ)を算定
- 60以上在宅強化型
- 40以上加算型在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ)を算定
- 20以上基本型
- 20未満その他型指標の要件なし
同資料の「基本報酬のイメージ」(多床室・要介護3の場合)では、超強化型1,065単位、在宅強化型1,014単位、加算型959単位、基本型908単位、その他型889単位(1日あたり。超強化型と加算型は在宅復帰・在宅療養支援機能加算51単位を含む)です。算定状況(令和7年11月審査分)では、基本型が47.1%、在宅強化型が42.2%、その他型が1.8%、療養型(Ⅱ)が1.0%です。要介護度ごとの正確な単位数は告示(指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準)で確認してください。
収支差率は、令和4年度▲1.1%、令和5年度▲0.6%、令和6年度0.6%(税引前、物価高騰対策関連補助金を含まない)と推移しています。
施設数と利用の状況
| 統計 | 時点 | 数 |
|---|---|---|
| 介護サービス施設・事業所調査 | 令和6年10月1日 | 4,214施設(前年比−36、0.8%減)、定員365,939人 |
令和6年の施設・事業所調査では、1施設あたりの定員は87.0人、在所者数は76.7人、利用率は88.2%です。第260回分科会資料は、請求事業所数と受給者数は平成30年度以降わずかに減少傾向、費用額は平成31年度から緩やかに増加傾向としています。
令和7年8月からの多床室の室料負担
令和7年8月1日から、「その他型」と「療養型」の老健の多床室で、療養室の1人あたり床面積が8㎡以上の人に「室料相当額控除」(▲26単位/日)が適用され、月額8千円相当の室料負担が入りました(介護保険最新情報Vol.1397)。超強化型・在宅強化型・加算型・基本型の多床室は対象ではありません。対象施設は、その他型または療養型として算定した月が7か月以上であることなどの要件があり、体制等状況一覧表などの届出が必要です。第260回分科会資料の算定状況では、室料相当額控除の算定は2.3%です。室料負担が入る人については補足給付の居住費の基準費用額が引き上げられ、利用者負担第1〜3段階の低所得の人は補足給付により負担が増えない仕組みです。同じ仕組みはⅡ型介護医療院にも入っており、介護医療院の記事にまとめています。
特養・介護医療院との違い
| 施設 | 介護保険法第8条の定義 | 主な役割 | 医師の配置 |
|---|---|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 第28項。心身の機能の維持回復を図り、居宅で生活できるようにする支援が必要な要介護者 | 在宅復帰 | 常勤換算で入所者100人に1人以上 |
| 介護老人福祉施設(特養) | 第27項。特別養護老人ホーム(定員30人以上)に入所する要介護者 | 生活の場 | 健康管理と療養上の指導に必要な数 |
| 介護医療院 | 第29項。主として長期にわたり療養が必要な要介護者 | 長期療養と生活 | Ⅰ型48人に1人+Ⅱ型100人に1人以上 |
特養は新規入所が原則要介護3以上ですが(厚生労働省の第260回分科会資料1)、老健には介護保険法と基準省令に要介護度の下限の定めがありません。特養の入所要件と人員基準は特別養護老人ホームの記事に、介護医療院のⅠ型・Ⅱ型の違いは介護医療院の記事にまとめました。
令和9年度改定に向けた論点
第260回分科会資料は、現状と課題として、在宅復帰・在宅療養支援等指標の得点構成(在宅復帰率とベッド回転率の合計では施設類型間で差がある一方、喀痰吸引と経管栄養の実施割合の合計では差が小さい)、協力医療機関の3要件を満たす体制の整備割合(老健83.3%)、感染症対策向上加算の未算定の多さ、ポリファーマシー(多剤服用)対策、看取りや意思決定支援の実施状況を示し、令和8年度診療報酬改定で病院から高齢者施設等への処方内容の変更を含む薬剤情報連携が評価されたことにも触れています。そのうえで論点として、医療・介護の複合ニーズを抱える高齢者が増える中で安定的にサービスを提供する方策、医療ニーズへの対応力・看取り・リハビリテーション・薬剤調整の観点から在宅復帰・在宅療養支援機能を促進する方策、算定率が低い加算や高い加算の扱いの3つを挙げています。これらは2026年10月28日時点の論点で、改定内容として決まったものではありません。改定の全体のスケジュールは令和9年度介護報酬改定の記事にまとめています。
介護ソフトの選び方
老健の記録・請求は、施設サービス計画、リハビリテーション計画、看護記録、支援相談員の入退所の記録を多職種で共有する場面が多く、在宅復帰率やベッド回転率などの指標を算出できるかも選ぶ基準になります。施設系向け介護ソフトの比較と施設の立場からの探し方で絞り込めます。リハビリテーションの計画書や訓練の記録を支える機器はリハビリ支援のカテゴリにあります。介護テクノロジーの導入費の補助は介護テクノロジー導入支援事業の記事にまとめています。
よくある質問
老健には何か月入所できますか
介護保険法と基準省令に入所期間の上限はありません。基準第8条は、対象者を「心身の状況及び病状並びにその置かれている環境に照らし看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療等が必要であると認められる者」と定めています。老健の基本報酬は在宅復帰率やベッド回転率で類型が決まるため、在宅復帰を目指す施設として運営されています。
超強化型と基本型は何が違いますか
在宅復帰・在宅療養支援等指標の点数です。10項目の合計が70点以上で超強化型、60点以上で在宅強化型、40点以上で加算型、20点以上で基本型、20点未満がその他型です。厚生労働省の第260回介護給付費分科会資料の例(多床室・要介護3)では、超強化型が1,065単位、基本型が908単位です。算定状況では基本型が47.1%、在宅強化型が42.2%です。
老健の医師は常勤ですか
介護老人保健施設の基準第2条は、医師を常勤換算で入所者の数を100で除して得た数以上と定めています。サテライト型小規模老健や医療機関併設型小規模老健では、本体施設や併設する病院・診療所の医師で基準を満たせる定めがあります。
令和7年8月からの室料負担は誰が対象ですか
「その他型」と「療養型」の老健の多床室に入所していて、療養室の1人あたり床面積が8㎡以上の人です。室料相当額控除として▲26単位/日が適用され、月額8千円相当の室料負担が入ります(介護保険最新情報Vol.1397)。超強化型・在宅強化型・加算型・基本型の多床室は対象ではありません。
出典
- e-Gov法令検索「介護保険法(平成9年法律第123号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123 - e-Gov法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100040 - e-Gov法令検索「介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/430M60000100005 - 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会 第260回 資料1 介護老人福祉施設」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001720275.pdf - 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会 第260回 資料2 介護老人保健施設」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001720423.pdf - 厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service24/dl/gaikyo.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1397 令和7年8月からの室料相当額控除の適用について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001507306.pdf
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