生産性向上ガイドライン(介護)とは|令和6年度改訂の構成・7つの取組・改善活動のステップとツール【2026年】

要点
介護の生産性向上ガイドラインとは、厚生労働省が介護事業所の業務改善の考え方と進め方をまとめた「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」のことです。令和6年度改訂版では、それまでサービス種別ごとに作っていたガイドラインから、共通する考え方・進め方とツールの解説を抜き出し、テクノロジーの活用を含む最近の取組事例を加えた「施設・居宅・医療系各サービス共通冊子」と、施設・居宅・医療系(前半・後半)のサービス別冊子に分けられました。厚生労働省のページでPDFが公開されています。共通冊子は、生産性向上を「業務改善や介護ロボット等のテクノロジーを活用するなど、職員の業務負担の軽減を図るとともに、業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的なケアの業務に充て、利用者と職員が接する時間を増やすなど、介護サービスの質の向上にも繋げていくこと」と定義し、7つの取組の例と、準備・課題の見える化から振り返り・練り直しまでの改善活動のステップを示しています(2026年10月24日時点)。
生産性向上ガイドラインとは
ガイドラインは、介護サービス事業所が生産性向上の取組を進めるときの参考資料として厚生労働省が作成し、「介護分野の生産性向上 ~お知らせ~」のページで公開しているものです。令和6年度改訂版の構成は次のとおりです。
| 冊子 | 内容 |
|---|---|
| 施設・居宅・医療系各サービス共通冊子(令和6年度改訂) | 生産性向上の考え方、改善活動の標準的なステップ、ツール集。PDF(45.9MB) |
| 施設サービスガイドライン(令和6年度改訂) | 施設系サービスの取組事例など。PDF(20.5MB) |
| 居宅サービスガイドライン(令和6年度改訂) | 居宅系サービスの取組事例など。PDF(26.5MB) |
| 医療系サービスガイドライン(令和6年度改訂) | 前半(34.4MB)・後半(33.4MB)に分かれる |
共通冊子の本文は4つの章からできています。CHAPTER 1「介護サービスにおける生産性向上の考え方」、CHAPTER 2「生産性向上に向けた改善活動の標準的なステップ」、CHAPTER 3「ツールを活用した改善活動の取組」、CHAPTER 4「ツール集」です。ガイドラインは、過去の版はe-Pub形式の電子書籍も公開されていますが、令和6年度改訂版の5冊子はPDFで載っています。
生産性向上の定義と2つの評価の視点
共通冊子は、介護に関する業務を、利用者に直接触れて行う介護を「直接的なケア」、それ以外を「間接的業務」に分けています。食事介助・排泄介助・入浴介助などの身体介護や、掃除・洗濯などの生活援助が直接的なケア、情報の記録・入力や会議・研修への参加が間接的業務です。取組の成果は、間接的業務の「量的な効率化」(業務の質を維持・向上しつつ、ムリやムダのある作業や業務量を減らす)と「質の向上」(ケアに直接関係する業務時間の割合を増やす、内容を充実させる)の2つの視点でとらえます。また、特定の個人への仕事の偏りを是正することも重要だとしています。
経営者の目線で見た目的としては、職員の心理的安全性を高めること、働きやすい職場環境を整えること、人材の確保・定着を図ること、介護サービスの質を維持・向上すること、地域社会に貢献することなどが例として挙げられています。
7つの取組
共通冊子は、介護現場における典型的な改善活動の取組内容の例を7つ示しています。テクノロジーの導入はその一部で、職場環境の整備や業務の明確化が先に置かれています。
| 取組 | 例 |
|---|---|
| 1. 職場環境の整備 | 5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)で、何がどこにあるかすぐ分かるようにする |
| 2. 業務の明確化と役割分担 | (1)業務全体の流れの再構築:作業分析を行い、役割分担やシフトを見直す。介護助手が周辺業務を担い、介護職員が専門性を発揮する。(2)テクノロジーの活用:課題に合った介護テクノロジー(ロボット・ICT)を導入し、身体的・心理的負担を軽くする |
| 3. 手順書の作成 | 決まっていなかった申し送り事項を検討のうえ標準化し、申し送りの時間を短くする |
| 4. 記録・報告様式の工夫 | 何度も転記していた介護記録を電子化して情報を一元管理し、記録作成の負担を軽くする。写真や動画を活用した利用者情報の共有もできる |
| 5. 情報共有の工夫 | インカムを配布し、タイムリーに情報を共有する |
| 6. OJTの仕組みづくり | 「他職員に対して教える」ことを教育し、標準的な手順で指導できるリーダーを育てる |
| 7. 理念・行動指針の徹底 | 理念・行動指針を全職員に伝え、徹底する |
テクノロジーの活用例としては、スマートフォンを活用した記録・入力の省力化、インカムを活用したコミュニケーションの効率化、移乗支援機器を活用した従事者の負担軽減、センサーを活用した見守りや排泄予測による省力化・ケアの質向上、情報の収集・蓄積・活用の円滑化によるケアの質向上が挙げられています。介護ソフトについては、利用者情報の管理、アセスメント記録、サービス内容の記録、ケアプランの管理、介護報酬請求などの業務を支援するソフトウェアとし、各記録で共通な項目が転記不要になる環境と、事業所内外の情報共有の円滑化を期待する効果としています。
見守り機器は見守り・センサーのカテゴリ、インカムなどはコミュニケーション機器のカテゴリ、介護ソフトは介護ソフトのカテゴリにまとめています。
改善活動のステップ
共通冊子のCHAPTER 2は、改善活動をPDCAサイクルで進める標準的なステップを、進めるコツと使うツールと合わせて示しています。PDCAはPlan(実行計画)から始まりますが、実際の取組では「PDCAの準備」(ステップ1と2)の段階がとても重要だとし、「準備8割」を合言葉に進めるよう勧めています。
- 改善活動の準備をしようプロジェクトチームとリーダーを決め、経営層がキックオフ宣言をする
- 現場の課題を見える化しよう課題把握シート・気づきシートから課題を抽出し、因果関係図・課題分析シートで構造化する
- 実行計画を立てよう改善方針シートで整理し、進捗管理シートで成果の指標を定める
- 改善活動に取り組もうまずはとにかく取り組み、小さな改善事例を作る
- 改善活動を振り返ろう効果測定ツール・進捗管理シートで指標を確かめる
- 実行計画を練り直そう上手くいった点・いかなかった点を分析し、計画を修正する
ステップ1「改善活動の準備」では、プロジェクトチームを組成し、経営層から組織全体に向けて取組で実現したいことと実行体制を示してキックオフを宣言します。ステップ2「課題の見える化」では、現場の意見を集め、業務時間調査や因果関係図で現状の業務フローと職場の課題を明らかにします。取組が上手くいかないときは、この「PDCAの準備」に立ち戻ることが有効だとしています。
ツール集
CHAPTER 2のステップの表では、ステップごとに使うツールが次のように示されています。気づきシートと因果関係図はCHAPTER 2で作り方が説明され、CHAPTER 4「ツール集」には管理者向け・職員向けの課題把握シート(職員向けは訪問介護・訪問入浴介護・通所介護・定期巡回・小規模多機能・居宅介護支援の6種)、課題分析シート、改善方針シート、進捗管理シート、業務時間見える化ツール、効果測定ツールが収められています。
| ステップ | 使用するツール |
|---|---|
| 課題の見える化 | 課題把握シート、気づきシート、因果関係図、課題分析シート、業務時間見える化ツール |
| 実行計画 | 改善方針シート、進捗管理シート |
| 振り返り | 効果測定ツール、進捗管理シート |
生産性向上推進体制加算・委員会との関係
令和6年度介護報酬改定では、短期入所生活介護・短期入所療養介護・特定施設入居者生活介護などに「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」を定期的に開くことが定められ(令和9年3月31日までは努力義務)、居宅サービスの解釈通知(老企第25号の改正)は、委員会の開催に当たって厚生労働省老健局高齢者支援課の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」等を参考に取組を進めることが望ましいとしています。対象サービスの全体と、同じ改定で設けられた生産性向上推進体制加算との関係は、それぞれの記事で扱っています。加算の要件は生産性向上推進体制加算の記事、委員会の開き方は生産性向上委員会の記事にまとめています。
ガイドラインの7つの取組は、委員会で何から手を付けるかを決めるときの棚卸しの枠として使えます。課題把握シートと業務時間見える化ツールで現状を数字にしてから、テクノロジーの導入を検討する順番が、ガイドラインの示す流れです。
参考資料:ICT手引きと介護ソフトのポイント集
厚生労働省の同じページには、ガイドラインと合わせて使う資料が載っています。
- 介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2: ICT機器・ソフトウェアの導入で実現できる生産性向上の全体像を、電子保存による文書量の削減、転記の不要化(一気通貫)による記録負担の軽減、標準仕様の活用によるデータ連携の効率化、情報共有の促進による介護の質の向上の4つに分類した手引き。本編と要約版がある
- 介護ソフトを選定・導入する際のポイント集: 介護ソフトを選ぶ・入れるときの確かめる点をまとめた資料
共通冊子では、都道府県に改善活動の支援を行う窓口「介護生産性向上総合相談センター」が設けられていることも案内されています。補助金の仕組みは介護テクノロジー導入支援事業の記事、施設の管理者向けの記事は施設系向けのページと管理者向けのページにまとめています。
よくある質問
生産性向上ガイドラインは誰が作っていますか
厚生労働省です。「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」として、「介護分野の生産性向上 ~お知らせ~」のページで公開しています。令和6年度改訂版は、施設・居宅・医療系に共通する冊子と、サービス別の冊子に分かれています。
ガイドラインの「生産性向上」はコスト削減のことですか
共通冊子の定義では、業務改善やテクノロジーの活用で職員の業務負担を軽くし、生み出した時間を直接的なケアに充てて、利用者と職員が接する時間を増やすなど介護サービスの質の向上につなげることとされています。評価の視点は、間接的業務の量的な効率化と、質の向上の2つで、職員間の負担の偏りの是正も重要だとしています。
改善活動は何から始めればよいですか
共通冊子は、ステップ1「改善活動の準備」(プロジェクトチームの立ち上げ、リーダーの決定、経営層のキックオフ宣言)とステップ2「現場の課題の見える化」(課題把握シート・気づきシート、業務時間見える化ツール)から始めることを示し、この「PDCAの準備」に「準備8割」の合言葉で時間をかけるよう勧めています。
生産性向上委員会を開くのに、ガイドラインは必須ですか
委員会の要件そのものではありませんが、解釈通知は委員会の開催に当たってガイドライン等を参考に取組を進めることが望ましいとしています。委員会の要件と開き方は生産性向上委員会の記事で確かめてください。
出典
- 厚生労働省「介護分野の生産性向上 ~お知らせ~」(生産性向上ガイドライン)
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html - 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 施設・居宅・医療系各サービス共通冊子(令和6年度改訂)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001545559.pdf - 厚生労働省「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001124428.pdf - 厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2 概要版」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276276.pdf - 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)の改正(令和6年3月15日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227935.pdf
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