介護現場の連絡・情報共有ツールの選び方|インカム・ビジネスチャット・申し送りアプリの違い【2026年】

要点
介護現場の連絡・情報共有ツールは、声でその場の全員に同時に伝えるインカム、文字で送って履歴が残るビジネスチャットや申し送りアプリ、介護ソフトに付いた情報共有機能などに分かれます。インカムは急ぎの連絡や指示出しに、チャットは記録として残したい連絡や外部の事業所とのやり取りに向いており、「どの情報を、誰に、どの手段で渡すか」を決めてから選びます。令和6年度介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算では、インカム等の職員間の連絡調整を速くするICT機器が、要件となる「見守り機器等のテクノロジー」の1つに挙げられています。
連絡・情報共有ツールの種類
伝え方と残り方で分けると次のとおりです。製品の例と説明は、掲載DBに載せている各製品の公開情報からまとめたものです。
| 種類 | 伝え方 | 向いている連絡 | 掲載製品の例 |
|---|---|---|---|
| インカム | 声で、その場の全員(またはチャンネル内)に同時に伝える | 応援の依頼、指示出し、申し送り、夜間の状況共有 | 音声記録AIオプション(ワイズマン×BONX)(インカム「BONX WORK」で話した内容からワイズマンの介護記録を作成)・ネオスケア(見守り・ナースコール・IPインカム・介護記録の機能を1台の端末に集約) |
| 記録と連絡を兼ねるスマホアプリ | 音声入力で記録を作り、同じアプリや端末でスタッフ間の連絡もする | 介助しながらの記録と連絡 | ハナスト(スタッフ間の連絡・情報共有)・ながらかいご(スタッフ間の通話機能) |
| ビジネスチャット・申し送りアプリ | 文字で送り、履歴が残る | 急ぎでない連絡、日程の変更、外部の事業所との連絡 | ― |
| 介護ソフトの情報共有機能 | 利用者の記録と同じ場所で共有する | 多職種での利用者情報の共有 | カナミッククラウドサービス(多職種間の情報共有機能) |
| 家族・保護者との連絡帳 | アプリで連絡帳や予約をやり取りする | 家族への連絡、利用予約 | ハートリンク(児童発達支援・放課後等デイサービス向け) |
| 連絡文の作成支援 | 生成AIで連絡帳などの文章づくりを支える | 外国人スタッフの連絡帳作成など | むすぼなAI |
国の「介護テクノロジー利用の重点分野」では、介護業務に伴う情報を集めて、記録・職員間コミュニケーションなどの業務に活用する機器・システムを「介護業務支援」の分野として定義しています。重点分野の全体は 介護テクノロジーの重点分野とは を参照してください。
何をどの手段で伝えるかを先に決める
厚生労働省の生産性向上ガイドライン(施設系サービス)は、情報共有を見直す手順を次の4段階で示しています。ツールを選ぶ前に、この順で話し合っておくと選びやすくなります。
- 共有する情報を整理するどんな情報を、誰に、いつ共有(報告)するか
- 情報を使う目的を明確にする報告・連絡・相談で何を期待するか
- 情報の拾い方のルールを決めるいつ、誰が、どこで、どんな情報を集めるか
- 情報の渡し方のルールを決めるいつ、誰に共有するか。緊急度や重要度、個人情報を含むかどうかで、ふさわしい手段を決める
同じガイドラインは、インカムの利点として、その場の状況を時間差なく全員で共有でき、申し送りや指示出しの時間を短縮できることを挙げています。一方、声の連絡は後に残らないため、残す必要がある情報はチャットや介護記録に書く、という分け方が考えられます。
インカム
声で、その場の全員に同時に伝える
- 時間差なく全員で共有でき、申し送りや指示出しの時間を短縮できる
- 応援の依頼、指示出し、申し送り、夜間の状況共有に向く
- 声の連絡は後に残らない
ビジネスチャット
文字で送り、履歴が残る
- あとから確認できる
- 急ぎでない連絡、日程の変更、外部の事業所との連絡に向く
- 外部と使うには、相手の事業所にも同じツールを使ってもらう必要がある
インカムを選ぶときの確認点
生産性向上ガイドライン(施設系サービス)には、インカムの事例が多く載っています。事例の題名から分かる工夫を、確認点に置き換えると次のとおりです。
| 確認点 | ガイドラインの事例 |
|---|---|
| フロアや部署ごとにチャンネルを分けられるか | フロア・部署別にインカムのチャンネルを設定し、情報の混線を防止して職種間の連携を強化した |
| 耳をふさがないタイプを選べるか | 耳を塞がないインカムを活用し、周囲の音を聞きながら情報共有を行えるようにした |
| 使い方のルールを作れるか | インカムの効率的な活用マニュアルを作成し、事故防止につなげる体制を整えた |
| 朝礼や申し送りの運用を変えられるか | インカム導入により、朝礼・申し送り等の運用を見直し、夜勤職員の負担を軽減した |
| 見守りセンサーと組み合わせられるか | 見守り支援システムとインカムの併用により、利用者の状態をリアルタイムで把握し、夜間の訪室を効率化した |
あわせて、次も確かめます。
- 台数: 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)で見守り機器等を複数導入する場合、インカム等の機器は全ての介護職員が使用することが要件です。介護老人保健施設などで見守り機器等を使って夜間の人員配置基準を緩和する場合も、夜勤職員全員がインカム等のICTを使うことが要件になっています。加算の詳しい要件は 生産性向上推進体制加算とは を参照してください
- 記録へのつながり: 話した内容を介護記録に残せるか。掲載DBでは、インカムの音声から介護記録を作る製品や、インカムと記録を1台にまとめた製品があります
- 通信の方式と費用: 施設内のWi-Fiで使うか携帯電話の回線で使うか、月々の通信費がかかるかを提供元に確認します
見守りセンサーとの組み合わせは 見守りセンサーの選び方 で説明しています。
ビジネスチャット・申し送りアプリを選ぶときの確認点
生産性向上ガイドライン(居宅系サービス)には、訪問系の事業所がチャットを取り入れた事例が載っています。
- 外部との連絡をチャットにした事例: ケアマネジャー、訪問看護事業所、委託先の訪問介護事業所との連絡を電話・FAXからチャットに切り替えた事例では、利用者1人・1週間あたりの外部への連絡時間が37分から8分(約8割減)、1回あたりの所要時間が平均5.2分から1.0分になりました。利用者ごとにチャットルームを分ける、読んだら「確認済み」ボタンを押すといったルールを事前に説明し、最初は連絡の多い数人の利用者から始めています
- 事業所内の連絡をチャットにした事例: 職員間の連絡を電話からタブレットとチャットに切り替えた事例では、月間728分(約12時間)の削減(職員14人あたり)と、連絡内容が残ることで重要な情報の共有漏れが防げたことが報告されています
- 37→8分外部への連絡時間利用者1人・1週間あたり。約8割減
- 5.2→1.0分1回あたりの所要時間外部との連絡。平均
- 728分月間の削減職員間の連絡を電話からタブレットとチャットに。約12時間(職員14人あたり)
これらの事例から、選ぶときに確かめたいのは次の点です。
- 利用者ごと・連絡内容ごとに部屋(チャットルーム)を分けられるか
- 「読んだ」「確認した」が相手に分かるか
- 外部の事業所も同じツールを使えるか。相手に端末が無い場合にどうするか(上の事例では連携先にタブレットを貸し出しています)
- 操作が簡単か。事例でも「操作が簡単なチャットソフトを選んだ」ことが工夫に挙げられています
個人情報とセキュリティ
連絡・情報共有ツールには、利用者の氏名や心身の状態が日常的に流れます。個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスは、「個人に関する情報」には音声や映像による情報も含まれるとしており、インカムで話す内容も対象になりえます。ガイダンスが安全管理措置として挙げている点のうち、ツール選びに関わるものは次のとおりです。
- アクセス管理: IDやパスワードによる認証、職員の業務に応じて必要な範囲にだけアクセスできる仕組み。認証は、記憶・生体情報・物理媒体のうち2つを組み合わせる二要素認証が望ましいとされています
- アクセス記録の保存: 誰がいつ情報を見たかを残せるか
- 機器の接続の制限: スマートフォンやパソコンなど記録機能を持つ機器の接続を制限する
- 委託先の監督: クラウドのサービスに情報を預ける場合、提供元の安全管理措置を確かめ、定期的に確認する
ガイドラインの4段階の手順でも、情報の渡し方は「個人情報を含むかどうか」で手段を決めるとしています。個人情報を含む連絡をどのツールで送ってよいかを、導入時にルールにしておきます。
小さく始めて、慣れる期間を見込む
厚生労働省の生産性向上ガイドライン(各サービス共通冊子)は、不慣れな業務や介護テクノロジーの導入では試行錯誤のため業務の効率が一時的に下がる(「U字の法則」)と説明しています。上の居宅系の事例でも、最初から全利用者分をチャットに置き換えると手順が混乱するおそれがあるとして、数人の利用者分から始めています。導入後しばらくは電話や紙と並行し、運用ルールを見直しながら切り替えます。
インカムや情報共有の機器を導入する費用は、都道府県の介護ロボット・ICTの導入支援の対象になることがあります。仕組みは 介護テクノロジー導入の補助金 を参照してください。
コミュニケーションツールの一覧
掲載している連絡・情報共有のツールを、選ぶための公開情報がそろっている順(採点方法)に並べています。スコアは機能の優劣ではありません。全製品は コミュニケーションのカテゴリ で比べられます。
よくある質問
インカムとビジネスチャットはどちらを入れればいいですか?
伝えたい情報によって分けます。インカムはその場で時間差なく全員に伝えられるため、応援の依頼や指示出し、申し送りに向いています。チャットは履歴が残り、あとから確認できるため、日程の変更や外部の事業所との連絡に向いています。厚生労働省の生産性向上ガイドラインは、情報の緊急度や重要度、個人情報を含むかどうかで伝える手段を決めるよう勧めています。
インカムは生産性向上推進体制加算の対象になりますか?
令和6年度介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算では、「インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器」が、見守り機器・介護記録ソフトなどと並ぶ「見守り機器等のテクノロジー」の1つです。加算(Ⅰ)で複数導入とする場合は、見守り機器・インカム等・介護記録ソフト等の全てを使い、インカム等は全ての介護職員が使用することが要件です。詳しくは 生産性向上推進体制加算とは を参照してください。
外部の事業所との連絡をチャットにするときの注意点は?
相手の事業所にも同じツールを使ってもらう必要があります。生産性向上ガイドラインの事例では、連携先に出向いて導入の利点と運用ルール(利用者ごとにチャットルームを分ける、確認したら確認済みボタンを押すなど)を説明し、端末が無い連携先にはタブレットを貸し出しています。利用者の情報を外部と共有するため、個人情報の取り扱いのルールも導入前に決めておきます。
出典
- 厚生労働省 老健局「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230329.pdf - 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上(業務改善)に資するガイドライン 施設系サービス(令和6年度改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001545561.pdf - 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上(業務改善)に資するガイドライン 居宅系サービス(令和6年度改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001545563.pdf - 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上(業務改善)に資するガイドライン 各サービス共通冊子(令和6年度改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001545559.pdf - 厚生労働省「「介護テクノロジー利用の重点分野」の定義」(令和6年6月改訂)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001268136.pdf - 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
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