介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業とは|補助額の計算・3つの要件・申請から実績報告まで【2026年】

要点
介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業は、令和8年度の介護報酬改定を待たずに介護従事者の賃上げを支援するために、令和7年度補正予算で行われた国の補助金です。実施主体は都道府県で、基準月(原則として令和7年12月)の介護総報酬にサービス別の交付率を掛けて6か月分の補助額を計算し、処遇改善加算の算定・ケアプランデータ連携システムへの加入(施設系は生産性向上推進体制加算)・職場環境改善の3つの要件を満たすほど交付率が高くなります。この記事では、厚生労働省の実施通知(介護保険最新情報Vol.1454)とQ&A(Vol.1462・Vol.1475)をもとに、補助額の計算、要件、使い方、申請から実績報告までの流れを整理します。
- 1,920億円令和7年度補正予算の規模
- 10/10補助率国が都道府県に支給
- 6か月分補助額の算出基準月は原則令和7年12月
- 1.0万円介護従事者の賃上げの水準協働化等の上乗せは0.5万円
事業の目的と仕組み
厚生労働省の資料(介護保険最新情報Vol.1460の別添)では、介護職員の賃金は改善してきたものの他産業との差があり、人材流出を防ぐ緊急的対応として、報酬改定の時期を待たずに賃上げ・職場環境改善の支援を行うとしています。支給要件・金額は次の3段です。
- 介護従事者に対する幅広い賃上げ支援(1.0万円)
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に対する上乗せ(0.5万円)
- 介護職員の職場環境改善の支援(人件費に充てた場合、介護職員に対する0.4万円の賃上げに相当)
対象期間は令和7年12月から令和8年5月までの賃上げ相当額で、サービスごとに交付率を設定し、各事業所の総報酬にその交付率を掛けた額を支給します。国が10/10で都道府県に支給し、都道府県が事業所に交付します。
- 国令和7年度補正予算
- 10/10で支給
- 都道府県計画書を受け付け交付する
- 申請・交付
- 介護事業所賃上げ・職場環境改善
補助額の計算
実施要綱では、補助額は被保険者ごとに次の式で計算し、1円未満の端数は切り捨てます。
- 被保険者ごとの補助額 = 基準月の介護総報酬 × 交付率
- 基準月の介護総報酬は、基準月の介護報酬総単位数(基本報酬サービス費に各種加算・減算を加えたもの)をもとにしたもの
- 交付率は、サービス類型と要件別に6か月分として設定された率
- 基準月は原則として令和7年12月
Q&A(第2版)の問3では、基準月の報酬が著しく低い場合や月遅れ請求がある場合に令和7年12月から令和8年3月の間の月を選べることや、令和8年1月から3月に新規開設した事業所も、都道府県の事業のスケジュールによっては例外的に対象になる場合があるとしています。一方、実施要綱では次の事業所は対象外です。
- 令和8年4月以降に新規開設された事業所
- 計画書の提出時点で廃止・休止となることが明らかな事業所
- 居宅療養管理指導・福祉用具貸与・特定福祉用具販売(交付率の表で0%)
訪問・通所系の交付率
実施要綱の表1から、主なサービスの交付率を抜き出しました。「①+②+③」は3つの要件をすべて満たす場合、「①+③」は処遇改善加算と職場環境改善の2つ、「①」は処遇改善加算のみの場合です。
| サービス | ①+②+③ | ①+③ | ①のみ |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 26.4% | 20.4% | 15.6% |
| 訪問入浴介護 | 20.4% | 16.2% | 13.2% |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 20.4% | 16.2% | 13.2% |
| 通所介護 | 19.2% | 15.6% | 12.6% |
| 地域密着型通所介護 | 24.6% | 20.4% | 16.8% |
| 通所リハビリテーション | 16.8% | 13.8% | 11.4% |
| 認知症対応型通所介護 | 34.8% | 27.6% | 21.6% |
施設・居住・多機能・短期入所系の交付率
表2から主なサービスを抜き出しました。②の要件は、施設系では生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの算定です。
| サービス | ①+②+③ | ①+③ | ①のみ |
|---|---|---|---|
| 介護老人福祉施設(特養) | 23.4% | 18.6% | 14.4% |
| 介護老人保健施設 | 15.6% | 12.6% | 10.2% |
| 介護医療院 | 10.8% | 9.0% | 7.8% |
| 認知症対応型共同生活介護 | 27.0% | 20.4% | 15.0% |
| 特定施設入居者生活介護 | 21.0% | 16.8% | 13.2% |
| 小規模多機能型居宅介護 | 24.0% | 18.6% | 13.8% |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | 18.0% | 14.4% | 11.4% |
処遇改善加算の対象外サービスの交付率
処遇改善加算の対象外である訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などは表3で交付率が1つだけ設定されています。訪問看護13.2%、訪問リハビリテーション10.8%、居宅介護支援・介護予防支援15.0%です。要件は、ケアプランデータ連携システムへの加入(または社会福祉連携推進法人への参画)か、処遇改善加算Ⅳに準ずる要件(任用要件や賃金体系の整備、研修、職場環境等要件)のどちらかです。
3つの要件
交付率を分ける要件は、サービスの種類で少し違います。
訪問・通所系
表1のサービス
- ① 基準月に処遇改善加算を算定している(誓約でも可)
- ② ケアプランデータ連携システムに加入している(同等のシステム・社会福祉連携推進法人でも可)
- ③ 職場環境改善に取り組む(②を満たせば③を満たす扱い)
施設・居住系など
表2のサービス
- ① 基準月に処遇改善加算を算定している(誓約でも可)
- ② 生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡを算定している(小規模多機能・看護小規模多機能・短期入所はケアプランデータ連携でも可)
- ③ 職場環境改善に取り組む(②を満たせば③を満たす扱い)
処遇改善加算の対象外
訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援など
- ケアプランデータ連携システムに加入している、または
- 処遇改善加算Ⅳに準ずる要件を満たす
③の職場環境改善は、実施要綱では「見える化」「体制構築」「役割分担」の3つの取り組みで、令和6年度の介護人材確保・職場環境改善等事業の補助を受けた事業所は満たしているものとみなされます。処遇改善加算そのものの仕組みは介護職員等処遇改善加算の令和8年度の変更で、生産性向上推進体制加算は生産性向上推進体制加算の要件で整理しています。
ケアプランデータ連携システムと同等のシステム
②の要件で使えるのは、ケアプランデータ連携システムに加えて、厚生労働省が同等の機能とセキュリティを有すると認めたシステムです。Q&A(第2版)の問9では、令和8年3月13日現在で次の4つが該当するとしています。最新の認定状況は厚生労働省のページで確かめられます。
- カナミッククラウドサービス(株式会社カナミックネットワーク)
- ケアプランデータ連携サービス(株式会社富士通四国インフォテック)
- 「でん伝虫」データ連携サービス(株式会社コンダクト)
- まめネット ケアプラン交換サービス(特定非営利活動法人しまね医療情報ネットワーク協会)
ケアプランデータ連携システムの仕組みと加入の手順はケアプランデータ連携システムとはで整理しています。システムに対応する介護ソフトはケアプランデータ連携の対応ソフト一覧で、サービス別の選び方は居宅介護支援向けのツールと訪問介護向けのツールで見られます。
補助金の使い方
実施要綱の7では、補助対象経費を2つに分けています。
| 経費 | 使える範囲 | 注意点 |
|---|---|---|
| 賃金改善経費 | 基本給・手当・賞与などの賃金の改善(退職手当は除く) | 前年の同じ時期と比べて賃金水準を下げないこと |
| 職場環境改善等経費 | 介護助手等の募集経費、研修費など | 介護テクノロジー機器の購入費には充てられない。賃金改善に充てることもできる |
Q&A(第2版)の問2では、令和8年3月末までに補助金の支給を受けた場合は令和7年12月から令和8年3月末までの間に、令和8年4月以降に支給を受けた場合は令和7年12月から都道府県が定める実績報告書の提出期限までの間に、賃金改善や職場環境改善を行う必要があるとしています。この補助金による賃金改善額は、処遇改善加算の賃金改善額には含めません。
申請から実績報告までの流れ
- 計画書を都道府県に提出する受付時期と期限は都道府県が設定する。法人単位の申請もできる(都道府県ごと)
- 交付決定を受けて補助金を受け取る支払いは法人ごとに1口座(国保連に登録した口座)
- 賃金改善・職場環境改善を行う対象期間は令和7年12月から令和8年5月まで
- 実績報告書を提出する期限は都道府県が定める
- 根拠資料を2年間保存する要件を満たしたことの資料(ケアプランデータ連携の加入はスクリーンショットなど)
実績報告で要件を満たしていなかった場合や賃金改善に充てていなかった場合は、都道府県から補助金の返還を求められることがあります。制度の問い合わせ先として、厚生労働省は事業所向けのコールセンター(050-3733-0222、9時から18時、土日祝日を含む)を案内しています。
受付状況と令和8年度の処遇改善加算との関係
計画書の受付は都道府県ごとに期限が異なり、たとえば千葉県は県のページで「申込申請は終了しました」と案内しています(2026年10月25日時点)。自分の都道府県の受付状況は、都道府県の高齢者福祉担当課のページで確かめてください。
国の資料(Vol.1460)では、②の要件だったケアプランデータ連携システムへの加入を、令和8年度の介護報酬改定で処遇改善加算の上乗せ区分の要件とすることが検討されていました。実際に令和8年度の処遇改善加算がどう変わったかは処遇改善加算の令和8年度の変更で整理しています。補助金の申請が終わった後も、ケアプランデータ連携システムや生産性向上推進体制加算の取り組みは加算の側で確かめる必要があります。
ケアプランデータ連携システムに対応する介護ソフト
②の要件に関わるケアプランデータ連携システムに対応する介護ソフトの一覧は掲載DBの編集部スコア順で表示しています。
介護ソフト全体の比較は介護ソフト比較一覧で見られます。
よくある質問
補助金はいつの分の賃上げに使えますか
国の資料では、対象期間は令和7年12月から令和8年5月までの賃上げ相当額です。Q&Aでは、令和8年3月末までに支給を受けた場合は令和8年3月末まで、4月以降に支給を受けた場合は都道府県が定める実績報告書の提出期限までに賃金改善を行うとしています。
訪問看護は医療分野の賃上げ補助金と両方申請できますか
Q&A(第2版)の問10では、医療・介護の両方のサービスを提供する訪問看護ステーションは、医療分野の賃上げ支援補助金とこの補助金の双方を申請できるとしています。
補助金で介護ソフトやタブレットを買えますか
実施要綱では、職場環境改善等経費は介護テクノロジー機器の購入費には充てられないとしています。機器やソフトの導入には、都道府県の介護テクノロジー導入支援事業など別の補助金があります。詳しくは介護テクノロジー導入支援事業の補助金で整理しています。
出典
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1454 令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の実施について」(令和7年12月25日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001623447.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1460 令和7年度補正予算の概要等について」(令和8年1月13日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001631369.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1462 令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関するQ&A(第1版)」(令和8年1月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001637153.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1467 令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業の広報資材について」(令和8年2月4日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001651943.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1475 令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関するQ&A(第2版)」(令和8年3月13日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001673832.pdf - 厚生労働省「介護保険最新情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index_00010.html - 厚生労働省「ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有するシステムについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44833.html - 千葉県「令和7年度介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」
https://www.pref.chiba.lg.jp/hoken/tetsuzuki/kaigo/r7chinagehojo.html
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