訪問看護の開業|ステーション開設の要件・人員基準・指定申請の流れ【2026年】

要点
訪問看護の開業(訪問看護ステーションの開設)は、法人を立ち上げ、保健師・看護師・准看護師を常勤換算2.5人以上(うち1人は常勤)そろえ、常勤の保健師または看護師を管理者に置いたうえで、介護保険の指定を都道府県(指定都市・中核市では市)から受ける手続きです。介護保険の指定を受けると、別段の申出をしない限り医療保険(健康保険法)の指定訪問看護事業者の指定もあったものとみなされ、医療保険の指定申請は要りません。ただし、24時間対応体制加算などの算定に必要な届出は、地方厚生(支)局に別に出します。この記事は2026年9月28日時点の法令と地方厚生局の案内に基づきます。
訪問看護ステーションは誰が開業できるか:法人であることが要件
介護保険で訪問看護ステーションを開業できるのは法人です。介護保険法は、指定の申請者が「都道府県の条例で定める者」でないときは指定をしてはならないとし(第70条第2項第1号)、その条例の基準を介護保険法施行規則が「法人であることとする」と定めています(第126条の4の2)。省令の文言は「法人であること」で、株式会社・合同会社・NPO法人などの法人の種類は限定されていません。個人事業のままでは指定を受けられないため、開業準備は法人の設立から始まります。
なお、この「法人であること」の例外は、病院・診療所が行う訪問看護です。病院・診療所の訪問看護はステーションとは別の扱いで、この記事ではステーションを開く場合を説明します。
医療保険の指定だけを受ける場合は、要件が変わります。健康保険法では、申請者が「地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者」でないときは指定をしてはならないとされ(第89条第4項第1号)、関東信越厚生局の案内では、これら以外の者は告示(平成4年厚生省告示第32号)に当てはまるか、厚生労働大臣の認定を受ける必要があると説明されています。
人員基準:看護職員は常勤換算2.5以上、管理者は常勤の保健師・看護師
人員基準の中心は、看護職員が常勤換算で2.5以上いることです。介護保険の基準省令(平成11年厚生省令第37号)第60条・第61条と、医療保険の基準省令(平成12年厚生省令第80号)第2条・第3条は、ステーションについて次のように定めています。
| 職種 | 介護保険の基準(第60条・第61条) | 医療保険の基準(第2条・第3条) |
|---|---|---|
| 看護職員 | 保健師・看護師・准看護師を常勤換算で2.5以上 | 保健師・助産師・看護師・准看護師を常勤換算で2.5以上 |
| 常勤の看護職員 | 看護職員のうち1名は常勤 | 看護職員のうち1名は常勤 |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 実情に応じた適当数 | 実情に応じた適当数 |
| 管理者 | 専らその職務に従事する常勤の管理者。保健師または看護師(やむを得ない理由がある場合を除く) | 専らその職務に従事する常勤の管理者。保健師・助産師・看護師(やむを得ない理由がある場合を除く) |
常勤換算は、看護職員の勤務時間の合計を、そのステーションで常勤の看護職員が勤務すべき時間数で割った数です(医療保険の基準省令第2条の文言)。常勤の看護職員が週40時間勤務と決まっているステーションなら、看護職員の勤務時間が週100時間以上で2.5になります。
- 管理者は、管理上支障がない場合は、そのステーションの他の職務(訪問など)や他の事業所の職務を兼ねられます(第61条第1項ただし書)
- 管理者は、適切な訪問看護を行うために必要な知識と技能を持つ者でなければなりません(第61条第3項)
- 介護予防訪問看護の指定もあわせて受け、同じ事業所で一体的に運営する場合は、介護予防の基準を満たせば訪問看護の人員基準も満たすものとみなされます(第60条第3項)
- 2.5以上看護職員の常勤換算うち1名は常勤
- 6年介護保険の指定の有効期間更新が要る
- 10日以内医療保険の変更届厚生局へ
- 2年記録の保存基準省令の年数
介護保険の人員基準は、実際には都道府県(指定都市・中核市)の条例で定められています。介護保険法第74条は、従業者と員数の基準を条例で定めるときは厚生労働省令の基準に「従い定める」としているため、上の数字は全国共通です。記録の保存年数のような運営の基準は、条例で省令と違う定めをしている場合があるので、指定権者(都道府県等)の案内で確認してください。
設備基準:専用の事務室と、訪問看護に必要な設備・備品
設備の基準は、事業の運営に必要な広さの専用の事務室と、訪問看護の提供に必要な設備・備品です(介護保険の基準省令第62条、医療保険の基準省令第4条)。同じ敷地内に他の事業所がある場合(医療保険の基準では、他の事業の事業所を兼ねる場合)は、専用の区画で足りるとされています。事務室の広さの数字は省令にはありません。
医療保険の指定の取扱い通知(令和6年3月5日保発0305第14号)は、医療保険の指定を申請するときの事業所の名称について、病院・診療所・デイサービスセンター・ナースセンターなどと紛らわしい名前は適当ではないとしています。名前を決める前に確認しておくと手戻りを防げます。
開業の流れ:介護保険の指定を受ければ医療保険はみなし指定
開業の手続きは、介護保険の指定申請が中心です。介護保険の指定(居宅サービス事業者の指定)は都道府県知事が事業所ごとに行い(介護保険法第70条第1項)、指定都市・中核市ではその市が行います。医療保険の指定は本来は地方厚生(支)局長が行いますが、健康保険法第89条第2項により、介護保険の指定を受けたときは、別段の申出をしない限り医療保険の指定があったものとみなされます。
- 法人を設立する介護保険の申請者の要件
- 人員と事務所を確保する看護職員は常勤換算2.5以上
- 介護保険の指定を申請する都道府県・指定都市・中核市へ
- 介護保険の指定を受ける医療保険の指定もみなしで受ける
- 厚生局から指定通知書が届くステーションコードが付く
- 加算などの届出を出す医療保険は厚生局、介護保険は指定権者
- みなし指定の条件: 取扱い通知では、管理者が保健師・助産師・看護師で、看護職員が常勤換算2.5以上という要件を満たす事業所が、医療保険の指定があったものとみなされる対象とされています
- 指定通知書: 都道府県等が指定をすると地方厚生(支)局長に通知し、厚生局は指定通知書に指定訪問看護ステーションコードを付けて事業者に交付し、審査支払機関にも通知します(取扱い通知)
- 加算などの届出: 近畿厚生局は案内(2023年3月28日付)で、みなし指定を受ける場合でも、24時間対応体制加算や精神科訪問看護基本療養費など訪問看護ステーションの基準に係る届出は別途必要としています
- 介護保険だけ行う場合: 医療保険の指定を受けたくないときは、介護保険の指定申請にあわせて「指定訪問看護事業を行わない旨の申出書」を地方厚生(支)局に出します
- 定款の書き方・申請書類・受付の締切・事前相談の要否は指定権者ごとに違います。所在地の都道府県等の案内で確認してください
介護保険と医療保険の指定の違い
介護保険と医療保険では、指定する人・根拠の法律・届出先が違います。両方の指定を受けている事業者が変更の届出をするときは、医療保険は地方厚生(支)局長へ、介護保険は都道府県知事または市町村長へ、それぞれ別に届け出ます(取扱い通知)。
介護保険の指定
都道府県・指定都市・中核市
- 根拠: 介護保険法第41条・第70条
- 申請者: 法人
- 有効期間: 6年ごとに更新
- 変更の届出: 指定権者へ
医療保険の指定
地方厚生(支)局長
- 根拠: 健康保険法第88条・第89条
- 介護保険の指定でみなし指定
- 加算等の届出: 厚生局へ
- 変更の届出: 10日以内に厚生局へ
| 場合 | 手続き(地方厚生局の案内) |
|---|---|
| 介護保険と医療保険の両方を行う | 介護保険の指定を受ければ医療保険はみなし指定。厚生局への指定申請は不要(加算等の届出は別) |
| 医療保険だけ行う | 厚生局に指定申請書を出す。地方公共団体・医療法人・社会福祉法人・告示に当てはまる者以外は、先に大臣認定が要る |
| 介護保険だけ行う | 介護保険の指定申請にあわせ、厚生局に「指定訪問看護事業を行わない旨の申出書」を出す |
医療保険の指定だけを申請する場合、取扱い通知は、資産の目録・事業計画・収支予算書で事業に必要な経理的基礎を確認するとし、例として損害賠償保険に加入するなど事故のときの賠償資力を挙げています。
開業前に準備する記録と請求の仕組み
開業前に、主治医の指示書・訪問看護計画書・報告書・請求を回す仕組みを決めておく必要があります。基準省令は、訪問看護の開始時に主治の医師の指示を文書で受けること、訪問看護計画書と訪問看護報告書を作って主治の医師に出すことを定め(介護保険の基準省令第69条・第70条)、指示の文書や計画書などの記録をその完結の日から2年間保存するよう定めています(第73条の2、医療保険の基準省令第30条)。
- 計画書・報告書: 様式と記載要領は訪問看護計画書・報告書の様式と記載要領で整理しています
- 医療保険の請求: 訪問看護療養費はオンライン請求が原則です。必要な端末や毎月の期限は訪問看護レセプトのオンライン請求へ
- 介護保険と医療保険の両方の請求: 1つのステーションで2つの保険の請求を行うため、ソフトが両方に対応しているかが選ぶときの要点になります。選び方は訪問看護の電子カルテ・訪問看護ソフトの選び方へ
訪問看護ソフトの一覧は次のとおりです。訪問看護ソフトのカテゴリでも比べられ、訪問看護ステーション向けの情報は訪問看護の方へにまとめています。
介護ソフトなどの導入費を都道府県が補助する事業もあります。対象の事業所や受付期間は都道府県ごとに違うため、介護テクノロジー導入支援事業で仕組みを確かめたうえで、所在地の実施要綱を確認してください。
よくある質問
看護師が個人で訪問看護ステーションを開業できますか
個人事業のままでは介護保険の指定を受けられません。介護保険法施行規則第126条の4の2は、指定の申請者の基準を「法人であること」としています。医療保険の指定も、地方公共団体・医療法人・社会福祉法人のほかは、告示に当てはまる者か大臣の認定を受けた者に限られます。
看護職員が常勤換算2.5人に満たなくなったらどうなりますか
人員基準を満たさない状態になります。介護保険法第74条は、指定を受けた事業者に条例で定める員数の従業者を置くことを求めており、基準は開業時だけでなく開業後も満たし続ける必要があります。欠員が出たときの扱いや届出は、指定権者(都道府県等)の案内で確認してください。なお、管理者が交代したときは、医療保険では10日以内に地方厚生(支)局へ変更の届出が要ります(健康保険法第93条、取扱い通知)。
医療保険の指定申請は別に出す必要がありますか
介護保険の指定を受ける場合は不要です。健康保険法第89条第2項により、介護保険の指定を受けると、別段の申出をしない限り医療保険の指定があったものとみなされます。ただし、24時間対応体制加算などの算定に要る届出は地方厚生(支)局に別に出します。
開業資金はいくら必要ですか
開業資金の目安を示した公的な資料は見当たりませんでした。法令で決まっているのは人員・設備・運営の基準で、事務室の広さや資金の額の基準はありません。医療保険の指定だけを申請する場合は、事業計画と収支予算書で経理的基礎が確認されます。
出典
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037 - e-Gov法令検索「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年厚生省令第80号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/412M50000100080 - e-Gov法令検索「介護保険法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123 - e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 - e-Gov法令検索「健康保険法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 - 厚生労働省保険局長「指定訪問看護の事業を行う事業所に係る健康保険法第88条第1項の規定に基づく指定等の取扱いについて」(令和6年3月5日保発0305第14号)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/kango/r6hokan_shitei_tsuuchi.pdf - 関東信越厚生局「指定訪問看護事業者の指定申請」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/kango/shitei.html - 関東信越厚生局「指定訪問看護ステーションの指定等に関する申請・届出」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/kango/shinsei.html - 近畿厚生局「指定訪問看護事業者の指定等に関する申請」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/gyomu/gyomu/hoken_kikan/kango/shinsei.html
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